第219話:この世界が丸いのはなぜだろう
さて、やり残したこと、といえば、この海の先に流氷があるのかを確認していない!
ということで泳げるところまで泳いでみることにした。
「この世界って丸いのかな。」
「急に何を言い出すのよ。」
「どうなんでしょう?」
「丸なの?」
「四角じゃなくて?」
「地図は四角だよな。」
「丸める……?」
「でもそれだと筒状だよ?」
「ですね、球ではないです。」
そうか!この世界って宇宙に行った人とか世界一周した人とかいないから詳細なことわかんないのか!
え、じゃあもっと気になってきた。
「この海の向こうには何があると思うよ。」
「え~海じゃない?」
「海でおしまい!」
「別の島とか?」
「俺は空に一票!」
「僕はカノイ様の意見的に地図の反対側だと思いますね。」
「兄さんはカノイ様の意見?僕はグルートの意見で反対側の陸地かな。」
「じゃあ地図の上の終わりは一体……?」
「それこそ空なんじゃないかな?」
う~ん、想像が膨らむな~。
能力で見える範囲が世界の全てではない可能性もあるんだよな。
だとすると新大陸の可能性もあるな。
「よし!行ってみるか!」
「いや無理でしょ!」
「陸地が見えないよ!?」
「にーちゃ!本当に泳いでいくの!?」
「いくら俺でもさすがに体力がもたんぞ。」
「いややってみる気ですか!?」
「それは流石に……。」
「うん……。」
「無茶苦茶だぁ。」
むぅ、やっぱり無茶か。
あぁ!もういいや!
能力使っちゃおう!
ということで、海の境界線にあるものと我々の座標を入れ替える!
「あ!?待てバカ!」
「カノイ様!?」
「うん、漂流したよね。」
「したよね、じゃねぇよ!」
「能力使っちゃってよかったんですか!?」
「老い先短い命なら、最期くらい好き勝手しようと思って。」
「いや、ファン達もいたんですが。」
「あ。」
「あ?」
「「「…………。」」」
「なによ……何よこれ!さいっこうじゃない!」
「「「え。」」」
「瞬間移動とか小説の中でしか見たことないわ!あと聖書!」
「やはりカノイ様は祝福されたお方だったんですね!」
「よくわかんないけど、すごいね……。」
「これを使えば輸出がもっと楽になるんじゃない!?」
「お兄ちゃんすごい!なにこれ!」
「瞬間移動ってことは反対側まで来たの!?」
おおむね好評である。
いや、受け入れるんかい。
なんだろう、なんていうか、
「はは!黙ってて損した!」
「そうよ!もっと早く教えなさいよ!こんなの何本の物語が書けるのよ!」
「もっと利益が出せるよ!」
「体調とかは大丈夫……?」
「やはり葬式は盛大にするべきですよ!」
「それだけは絶対やめて!」
「お兄ちゃんってすごいんだね!瞬間移動?できるんだ!」
「う~ん、厳密には瞬間移動じゃないんだけど、おおむねそう。」
「にーちゃ!他には何ができるの?」
「え~っと、なんだ?……アイスとか作れる。」
「「すごーい!」」
「どうしようリボル!うちの弟達がかわいい!」
「落ち着け、お前逆にかわいくないって言ってる時がない。」
「それもそうだったな……。」
いつでもかわいかったわ。
「ところで向こうに見える陸地はどこの国?」
「あ~、あれは……連合国かな?」
「じゃあやっぱり右の海と左の海って繋がっているのね!」
「一周するんだ!」
「じゃああっちには帝国があるのかな?」
「皇国かもよ?」
「あっちは確か共和国……。」
「じゃあ世界って丸いんだ!」
謎解明!
「このことは皆秘密な!」
「え、なんで?」
「なんでって説明できないだろ?世界が丸いなんて。」
「「「……た、確かに!」」」
「こう!能力でこう!」
「いやいや理論とか何にもわかんないだろ?」
「う、う~ん。」
「だから、この謎はいつか転生賢者様が解決してくれるだろうから、ほっとこうぜ。」
「まぁ……。」
「それもそうですね……。」
「皆だけの内緒!」
「うん!」
世界は丸かった!
けどそれは私達だけの秘密だ。
いつか本当に世界一周した人が、なぜ丸いのかを考える人が現れる。
それまで世界には内緒にしておこう。
カノイ・マークガーフ、54歳、知りたかった真実にたどり着いた夏の出来事である。
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