第216話:定期的な問診は老後には必要
「「問診で~す!」」
「あれ?カロンにマロン?」
「カノイお義母様専用診断で~す!」
「カノイお義母さん大丈夫ですか~?」
「大丈夫だが……?」
体調は今日も特に問題ないはずだ。
「お義母様、エイルとジェイルが亡くなってからすっごく泣いてたから、精神的に患っていないか心配で来たよ!」
「お義母さん、パパさんとママさんが亡くなった時にもすっごく落ち込んでたから!」
「あぁ、なるほど。心配かけてごめんな。」
「「大丈夫ですか?」」
「うん、大丈夫だよ。不思議とね。」
「う~ん、なれたとか?」
「そんななれ嫌だよ。」
「あはは、流石になれはしないかな。悲しいは悲しいよ。ただ、なんとなく納得はできただけだな。」
「納得?」
「改めて、寿命って仕方がないものなんだなってさ。」
「仕方がない?」
「初めからなのか、それとも生きてきた結果なのかはわからないけど、いつ死ぬかって大体決まってるんだなって。」
「それは……でも、病気とか事故で亡くなることもあるし……。」
「そうだね。それとは別に、食べ物の消費期限みたいに、人間の肉体にも期限があるんだなって思ってさ。」
「食べ物みたいに?」
「そう、おおよそ60年。今のところ家の村では超えた者はいないけど、これから超える奴もいるかもな。」
「おおよそ。」
「60年。」
「知ってるか?家のパパとママは二人とも59歳で亡くなったんだ。エイルとジェイルは58歳。」
「そういえば、年齢聞いたことなかったかも。」
「大体皆同じくらいって思ってた。」
「そうだね。次に高齢なのが、ファン。その次がヴァイス、リボル、私、フロージ、シュバルツ、グルート、トム、ヘディン。」
「「……。」」
「順番が決まっているならね?もしかしたらファンが65歳まで生きて私やグルートが先に亡くなることもあるかもしれない。」
「そっか……。」
「うん……。」
「ここからはもう運だな!誰が死んでも、もうおかしくないところまで来ている。」
「「……。」」
「せめて悔いの無いように生きたいな。うん。そして悔いの無いように生きてほしい。」
「……そう、だね。」
「……見送る側としては、つらいよ。」
「なんだぁ?本当にきつかったのはカロンとマロンの方なんじゃないか?」
「……うん。」
「……そうかも。」
「……よし!今日は思いっきり甘えていいぞ?」
「「え?」」
「身内の死なんてそう耐えられるもんでもないのに、人のことばっかり気を使って泣かなかっただろ!……思いっ切り泣けばいいよ。」
「……ふっうぅ!」
「うわーん!なんで死んじゃうんだよ!」
「死ぬなら言っておいてよ!突然いなくならないでよぉ!」
二人はその後も一晩中泣いた。
一晩中泣いて泣いて、疲れて寝て、起きた後にはけろっとした顔で「「健康診断です!」」と叫んだ。
その姿は、エイルとジェイルにひどく似ていた。
カノイ・マークガーフ、53歳、改めて死というものに対して向き合う機会をくれた二人に感謝した秋の出来事である。
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