第214話:普通でいることが一番難しい
忘れかけてたけど終活だ~!
ということで人生最後にしたいことをしていくことにする。
まずは今までの生活を記録に残す。
これはファンが何とかしてくれている。
死ぬまで健康体。
これはエイルとジェイルが……できなくてもカロンとマロンが何とかしてくれるだろう。
では他にすることといえば!
とりあえず思いつくのはお葬式!
ということで葬式の準備を始めようと思う。
「とりあえずいい感じの棺桶と音楽だな~。」
「明るく言うことじゃないですね。カノイ様。」
本日はシュバルツ君に参加してもらっている。
「ヴァイス兄さんでよかったんじゃないですか?」
「だってあいつ無駄に豪勢にしそうなんだもん。」
なんていうか、信仰に近い感情?も入ってるっぽいんだよな。
とんでもない規模のもの持ってこられても困る。
「とりあえず棺桶に羽根でもつけときますか?」
「うん、シュバルツがヴァイスの弟だってこと忘れていたね。」
「とりあえず式自体は質素に。棺桶も箱でいいよ。あ、中には花とか入れてくれると嬉しいかも。あと木の実。」
「全体的にファンシーなことになりそうですね。」
「まぁ確かに教会で花まみれの箱の中にいるのはなかなかにファンシーだな。」
でも葬式ってそういうものじゃないか?
「ぶっちゃけどんなに質素でもいいんだよ。私は皆が花を手向けてくれるだけでうれしいよ。」
「カノイ様……。」
自分が死ぬ時に花を手向けてくれる人がいる。
それだけでとっても嬉しいことだ。
そんな家族がいっぱいいるんだから私は贅沢者である。
「カノイ様、僕も手向けられる限りの花を手向けます!」
「うん、1本でいいからな?」
シュバルツ君はこういうことになると浪費家になるからよろしくない。
花は1人1本!
これはルール化しておこう。
さて、あとは何だ?
葬式に必要なものといえば……。
「まぁ墓か。」
「お墓ですか?」
「うん、といっても両親と同じところだけどね。」
教会から少し離れた丘の上、ちょっとだけ成長した木を見ながら自分の墓を決めようと歩いてみる。
「う~ん、せめて木の養分になる位置に埋まりたいもんだな。」
「なんでですか?」
「なんというか、綺麗な花が咲きそうじゃない?」
前世の記憶にある桜の都市伝説。
美しい桜の木の下には死体が埋まっている。
そんなことを思い出しながら私の血で綺麗な花が咲くのか?とちょっと苦く笑う。
「まぁ、いつか本当に死んだ人に会えるとしたら、私に会いたいと思ってくれる人もいるかもしれんしな。」
「カノイ様に会いたい人は未来にたくさんいるでしょうね!なんせ領主様で王様で発明家ですから!」
「何それ発明家は初耳なんだけど!?」
いつの間にそんなことに!?
「カノイ様は行商人の間では稀代の発明家として有名ですよ!」
「え~……いや、そうか、考えた物売りに出してれば発明家か。」
そういう意味では私発明家だったのかもしれん。
人生どうなるかわからんな~。
前世ではただの一般人だったのに今では領主様で王様で発明家……。
改めて、すごい経歴だな。
「そんな発明家の葬式が普通でいいんですか?爆発とかさせますか?」
「うん、普通で頼む。」
お願いだから普通に眠らせてくれ!
カノイ・マークガーフ、53歳、たびたび派手な演出を盛り込まれそうになりながらもなんとか普通の葬式を死守した春の出来事である。
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