第211話:自分で責任が持てないものは親に相談しよう
「レア!私と結婚してほしい!」
その大声に何事だ!?と急いで駆けつける。
「え、やだ。」
するとリアン君がレアに振られているところに遭遇した。
え、どうしてこうなった?
「な、なんで駄目なの!?」
見るからに落ち込んだ様子ながら食い下がるリアン君!
「だってお城よりマークガーフ村の方が好きだもん。」
当たり前のように答えるレア!
え、嬉しい。ありがとう。
「じゃ、じゃあ村にいていいから!私が会いに来るから!」
まさかの通い妻スタイル!?
「いや無理でしょ。お城にいない王妃様なんて聞いたことないよ。」
ど正論!
「うぅ、でも……。」
「リアン!ここで諦めてどうするの!」
「そうだぞ!今までののろけ話は何だったんだ!」
「毎回聞かされてた我らのことも考えろ!」
あ!応援なのか文句なのかわからない声援が!
というかノアもマナもウルもよく付き合ってくれてたな。
いい子達に育って私はうれしいよ。
「うぅん。あ!お菓子食べ放題もつけるよ!」
「それで釣れるほど安くはないよ?」
「うぅん……お仕事しなくてもいいよ?」
「王妃としての職務は必ずあるでしょ?さぼりはよくないよ。」
「結構詳しいなレア?」
さては先手を打って調べてたな?
「うぅん……ううぅ、お願いだから結婚してよぉ……。」
「すごい!一国の王様に泣きつかれてるってこういう心境なんだね!カノイおばあちゃん!」
そうだぞ!なんかすっごく申し訳なくなるだろう!
さて、レアはどうするんだろうか。
王妃として城に上がるのが嫌っていうわがままを言った人は今までいなかったんだろうな。
調べた限り実例はなかった。
しかし、レアは違う。
はっきりものをいう性格に育ったこの子は嫌なものは嫌だという。
つまりは……?
「結婚自体は嫌ではないんだよな~。」
「お願いだから結婚してよ~!」
「え~でもな~。」
かわいいねぇ好きなこの困ってる姿が見たいんだねぇ。
でもそろそろいいよって言ってあげないと護衛の人達おろおろしてるねぇ。
レアはどういう落としどころを狙っているんだろうか?
「じゃあね!マークガーフ村の近くに領地をくれたら結婚してあげてもいいよ!」
「あ、こいつまだ領主の座を狙っていただと!?」
しかもしっかり新しい領地をゲットしようとしている!
「そんなことでいいの?本当に!?わかった!じゃあ近場に不正をしている貴族がいないかすぐ探すね!」
こっちはこっちで領地を没収して捧げる気満々だぁ!
まぁ不正はよくないからね。
仕方がないね。
「ふふん!これでレアはおばあちゃんと同じ領主様なのです!」
「あ!レアずるい!」
「俺も領地ほしい!」
「我も!新しい領地!」
「あはは!都合よく不正をしている領主が見つかったらね!」
そういってすがすがしく笑うリアン君!
絶対に不正を見逃さないつよつよ国王様だ!
うん、私達が育てた。
まさかこんなことになるとは……。
なお、その後、盛大な結婚式と同時に複数の領地が没収された。
約束通り、領地はレアとノア、マナとウルに分配されたが、最終的に総合してマークガーフ領とされた。
領主として土地を収める夢はかなえつつ実務的な部分は親に押し付ける……なんとも恐ろしい孫達である。
カノイ・マークガーフ、52歳、あまりの仕事の多さに我が子に泣きつかれて久しぶりに現場復帰した夏の出来事である。
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