第208話:跡継ぎはあらかじめ指名しておこう
「マナのばかー!」
夕暮れ時に響き渡るノア怒声。
「うん!?なんだなんだ?」
「ぐすん。ノア、出てっちゃった。」
「えぇ!?もう日が暮れるぞ?まじか!」
そもそもどうしてこうなった!?
「どうして……どうしてだっけ?」
「ありゃ。原因がわからんやつか。」
「なんか、「マナが馬鹿だって」ノアが言って、だからマナも「大人ぶってるくせにちっちゃい」って言って……。」
「おぉう、なかなかの火力だな。」
「そしたらノアが出てっちゃった……マナのせいで出て行っちゃった……!」
「あ~大丈夫大丈夫。連れ戻すからマナは安心して待っていなさい。」
喧嘩したからっていうより自分のせいでノアが出て行っちゃったから泣いてる感じだな。
とりあえず心配だからリインを呼び出してマナを任せる。
さて、ノアはどこに行ったのやら。
「お?いたな。」
森の入り口、木の根元にうずくまるように隠れているノアを見つけた。
「……カノイおばあちゃん?」
「そうだぞ~。どうした?急に飛び出したりして。」
「おばあちゃん!うえーん!」
「おっと、本当にどうした?なにが悲しいんだ?」
「ノア、ノア、マナを傷つけちゃった!悪いこと言っちゃったの!」
「そうかそうか。それでノアはどうしたんだ?」
「喧嘩して、悪口言って、飛び出してきちゃった!もう許しておらえないよぉ!」
「そんなことないぞ~。マナも反省してたし、仲直りはちゃんとできるよ。」
「……本当?」
「本当本当。だから一緒に帰ろう。」
「……うん!」
「ノア!ノア!ごめんね!ちっちゃいって言っちゃってごめんね!」
「マナ!ノアも!馬鹿って言っちゃってごめんね!」
「一瞬で解決した!なんで喧嘩してたんだ?」
「さぁ、それは、謎だな。」
結局喧嘩の原因はわからないままノアとマナの喧嘩騒動は収まった。
翌日には二人ともけろっとした顔で鬼ごっこをして遊んでいた。
本当に、なんで喧嘩してたんだろう。
「レオ!馬鹿!マークガーフ領を継ぐのはマオだよ!」
「違うもん!おバカなレオじゃなくてマオが継ぐんだよ!」
……まさかこれが原因か?
「レオ~マオ~喧嘩する子には私の跡は継がせんぞ~。」
「「え!?」」
「じゃ、じゃあレオ、喧嘩やめる!」
「マオも!」
うん、結局は仲良しではあるんだよな。
カノイ・マークガーフ、51歳、喧嘩するほど仲がいいというがその喧嘩の原因がどんなことかはわからんなと思う秋の出来事である。
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