第192話:地位の高さは責任の重さ
「王よ!我が町の予算が減らされています!どういうことですか!」
「いや、中抜きがあったから……。」
「な、なんですと!?」
「こちらの調査は済んでおります。あとはどうするかは身内でお話合いください。」
「は、ははぁ!」
「王よ!なぜ我が村にお越しになられるとお決めになったのですか!」
「いや、学校どこに建てようかなって思って……。」
「貴公らの地は土地が有り余っておる。開拓するのに適して居る土地に学校を建てないいわれはない。支援は国家が使用て。」
「は、ははぁ!」
「王よ!我が村への街道に魔物が!」
「ちょっとマークガーフ村!支援足りてないよ!」
「おっしゃ直行で向かうわ!」
「は、ははぁ!」
「え?問題多すぎない?思ってたより大変なんだけど。」
「いや、問題を増やしているというか、対応を乞われる理由はカノイ様にありますよ。」
「突発的な粛清、大幅な教育改革、そして魔物退治支援だ。主にマークガーフ村が行ってきたいたって普通の政治だな。」
「その普通が一番大変にしてる原因なんだよな~。」
「そうなの?え、普通って普通じゃないの?」
あれ?混乱してきたぞ?
一つの村に一つ学校があって、悪人が裁かれて、安全な生活を送るって普通じゃないのか?
そっかぁ……。
「それがスタンダードになる世の中を目指します。」
「目指すっつったって無理なこともあるだろ。」
「まぁ最終的にはその村や町に一任してますからね。なるようにはなるでしょう。」
「うむ、幸い巨悪と呼ばれるような存在もいない。最終的にはカノイのしたい様になるだろう。」
改めて、この世がいい人ばかりでよかった~。
いや、犯罪はあるが魔が差して、くらいの感覚で行っているものがほとんどでルーの言う通り巨悪といえる存在はこの世には皆無だ。
統治も比較的創作世界から考えるとまともに機能しているものがほとんどだ。
皆何やかやで頑張っているんだなっていうのは裏方に回っているからこそわかることだ。
提出されてくる書類も試行錯誤の跡が見えて心に来る。
いや、簡単に受領はできんが。
できる限り予算を振れるところには振っていきたい。
なんとか経済も回していきたい。
「うん、この国嫌いじゃないよね。」
「そりゃあ生まれた国だからな。」
「いや、そういうのもあるけど、なんやかんや皆頑張っているからな。そういうのわかってくると愛着がわく。」
「一国の王様としてはよい傾向なのではないでしょうか。」
「だよね。この国の王でよかった的な話だし。」
「国がよかったというより人が良かったといえるだろう。我らへの理解も思いのほか深まっている。お人よしだな。」
「そうなんだよな。転生者とかもだけど受け入れることがどれだけ難しいことかを考えると、改めてこの世界の人々は人がいい。」
異端をはじくのは簡単だ。
だけれどそれを受け入れるのは極めて難しい。
そういった意味ではこの世界の人々は寛大でやさしい。
改めて、この世界に生まれてよかったな~。
「さて、この国をよくするためにも仕事を頑張るか。」
「書類、また増えましたからね。」
「まともに読んで貰えると思うとそりゃあ増えるわな。」
「話が通じるかどうかは重要だからな。」
そんなこんなで今期は書類仕事で消えそうだ。
王様って大変なんだな……。
カノイ・マークガーフ、47歳、普段の仕事の数倍の量を捌くこととなった秋の出来事である。
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