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第185話:幸せの感じ方は人それぞれ

冬に入るあたりで、冒険者の一人、ケビンが亡くなった。

「はぁ、やっと逝ったか。あいつ寂しがり屋だから最後にならないか心配だったんだよ。」

「次は私かマットね~。年齢的に。」

「……う~ん。」

「「どうしたのカノイ?」」

「いや、さぁ、こんなこと聞くのもなんだけど、二人はなんで笑っていられるの?」

「「……。」」

「身内が死んでしまったら、私は、上手く笑えなかった。笑って見送りたかったけど、どうしても笑えなかったよ……。」

「……。」

「……うーん。カノイは考えすぎよ。」

「え。」

「いや、でも俺達も考えすぎなんだ。俺達冒険者は"いつ死んでもいい"ように生きてきたから。」

「そうね。死が日常にあったのよ。昨日会った人は今日死んでるってこともあったわ。」

「そっか。冒険者だもんな。」

「そうだね。いつでも遺書を書いてきたし、家族とは喧嘩別れみたいになっていたりもするよ。」

「家もそうね。家を継げってさんざん言われてきたけど、もう時効よね?」

「そうなんだ……。そういえば、冒険者達の家族の話って聞いたことなかったな。」

「そうだったかしらね?家は普通よ。商店を営んでいたから家を継げって再三言われたけどね。」

「家も普通の家庭だったな~。普通に農業をやって、普通に生活してた。だから急に冒険者になるって言った時は猛反対されたよ。」

「なるほどな~。結構普通の家庭からの出なのか。ケビンは?」

「ケビンは……冒険者の家系の出だったわね。」

「確か、戦士と騎士の両親だったかな?俺達の中では一番円満な家庭だったよ。」

「へぇ~そっか、両親が冒険者のパターンもあるのか。」

「最初のころはひどかったわよ~。「俺の方が先輩だから!」ってなんでも真っ先にやろうとしてね~。」

「やばそうなキノコも一番に食べてお腹壊してたよね~。」

「あ~なんかわかる気がする~。」

「はぁ、懐かしいわ。冒険してた頃はこんなに穏やかな余生を過ごすなんて思ってもみなかった!」

「本当にね。まさかあのケビンが眠るように死んでいくなんてね。」

「本当に!いい最期よ!私も、これがいい。」

「うん、俺もこれがいい、な。」

「……そっか。ケビンもナンシーもマットも、幸せなんだね。」

「えぇ、今が一番幸せよ。」

「うん、毎日幸せだなって思ってる。」

「そっか……そっか。」

簡単なことだった。

ケビンは死のその瞬間まで幸せだったのだ。

幸せだって、皆に伝えて生きてきたのだ。

だから皆、満足のいく人生だったって笑えるんだ。

「……私も幸せだな。みんなと一緒に居られて。ケビンと一緒に居られて。」

「そうね。幸せだわ。」

「うん。幸せだね。」

カノイ・マークガーフ、45歳、幸せな人生を再確認した冬の出来事である。

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