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第170話:受け継がれたものは確かにある

「……お兄ちゃん?」

「……あぁ、フロージか。どうした?」

「そろそろ休もう?もうずっと働いてるよ?」

「そうかな?そうかも。でもやらなきゃいけないことだからさ。」

両親が死んでしばらく、私は両親の仕事といつも通りの仕事を掛け持ちしていた。

「まぁ頑丈に産んで貰ったからね。大丈夫だよ。」

「……むぅ!」

「にーちゃの馬鹿!」

「え!?ヘディン!?」

と、突然ヘディンが飛び込んできた。

ぎゅっと抱きつかれると不思議と安心感がある。

「にーちゃがやってるのはパパとママの仕事なの!2人分の仕事を一人でやってたらにーちゃ壊れちゃうよぉ!」

「ヘディン……。」

「そうだよ!お兄ちゃんは普段の仕事もちゃんとやってるんだから全部で3人分だよ?からだ壊しちゃうよ!」

「フロージ……。」

心配をかけてしまった申し訳なさが半分、至らない自分に悔しさが半分、といったところか。

こんなに心配をかけているということは顔色、悪いんだろうな。

もっと効率的に処理できればよかったんだが……いささか感情が乗っている分負担が大きくなっていたのだろう。

なによりも、

「ごめんな。フロージ、ヘディン。ごめんな。」

弟を泣かせてしまう至らない兄であるということが許せなかった。

正直私も今にも泣きそうだ。

こんな時に父上と母上がいてくれたら、なんて思ってしまった。

もう2人はいないのに。

「フロージがママの仕事手伝うよ!」

「え?」

「書類作りはなれてるから任せて!お兄ちゃんはサインを書くだけでいいから!」

「ヘディンも!ヘディンもパパの仕事をやるよ!」

「ヘディンまで……?」

「ヘディン、皆と仲良くなれるから!外交なら任せて!」

「フロージ……ヘディン……。」

あぁ、私はなんて幸せ者なんだろう。

立派で、優しい弟達に支えられて、この村を納めていけるのだから。

「……そうだな、一人でやる必要はないんだよな。ありがとう、フロージ、ヘディン。」

「「うん!」」

「でも2人で抱え込むのも駄目だから、皆にも相談しような?」

「うっ!そ、そうだね。そこまで考えてなかったや。」

「領主じゃなきゃできない仕事だけやっちゃおう!」

「おー!」

父上、母上、改めて、私達を産んでくれてありがとう。

これからも兄弟支えあって生きていくよ。

「シェリルも!」

「え?」

「チェリルもお仕事やる!」

「え!?」

そういって部屋に飛び込んできたのは我が家の長子達。

「「私達もマークガーフ家の長子だもん!」」

「それは……そうだな?」

よく考えてみれば上手く回っていたからシェリルとチェリルには仕事を任せていなかった。

2人とも伴侶であるカロンとマロンの仕事を手伝っていた筈だが……。

「お手伝いのお手伝いだから毎日のように居なくても大丈夫だよ!」

「たまに顔を出せば大丈夫だよ!」

「そ、そうか。じゃあ手伝って貰おうかな?」

「「うん!」」

「……それに、私達もいつかやらなきゃだから。」

「カノイママの後を継がないとね。」

「シェリル……チェリル……。」

どうやら立派に育ってくれたのは弟達だけではないらしい。

この後しばらくは覚悟を決めた息子達の教育にせいを出すのであった。

カノイ・マークガーフ、42歳、優しい風が吹き抜ける春の出来事である。

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