第169話:泣きながらでもとにかく書くしかなかった
冬が終わりかけ、春の風が吹くなか、父は死んだ。
「最後にお前達の顔が見れてよかった。」
「そんなこといわないで!パパ!」
「うぅ、パパ!死なないで!」
「ごめんな。でもこれは順番だから。」
「あなた……スヴェン、お疲れ様でした……!」
「シシー……シリウス、君とこんな関係になるなんて初めは全く思わなかったよ。私と夫婦になってくれてありがとう。」
「スヴェン……!」
「カノイ……。」
「はい、パパ。」
「後の事は任せたよ。村の事、家族の事。」
「うん、任せてよ。だってパパの子供だもの。上手くやるよ。」
「あぁ……死後の世界があるとするなら、そこから見守っているよ。」
「フロージ、お兄ちゃんを支えてやってくれ。お前の明るさは皆の希望だ。」
「パパ!」
「ヘディン、お兄ちゃん達と仲良くな。お前ならどんな人とでも仲良くなれる。」
「パパぁ!嫌だよぉ!」
「あぁ、本当に、幸せな人生だった……。」
「……パパ、今まで育ててくれてありがとう。」
それから家の雰囲気は暗くなって雪解けが始まってしばらく。
「ママ!ママまでいなくなったらフロージ……!」
「ママぁ!ママぁ!」
「あらあらこんなに泣いちゃって!私もスヴェンも幸せ者ね!」
「ママ……。」
「カノイちゃん一人で無理しちゃダメよ?あなたの周りにはあなたの事を思うたくさんの人がいるんだから!」
「ママ……。」
「フロージちゃん!辛い時は一杯泣きなさい!大人になっても泣いたっていいの!たっくさん泣いて、その後は、またママの大好きな笑顔を見せてね?」
「うん……うん、ママ……!」
「ヘディンちゃんあなたにとって大好きな人達を大切にしなさいね?あなたが大好きと思った分だけ、相手も大好きって思ってくれているわ!」
「ママぁ……やだ……嫌だよぉ……。」
「あぁ、なんて幸せなのかしら……スヴェン、もし生まれ変わったらまた、あなたと…………。」
「ママ、私の事を、私達の事を産んでくれてありがとう。」
それから春がきて、お葬式は盛大に行われた。
皆が泣いて、皆が笑顔で見送ろうと泣き笑っていた。
2人は笑顔で、母が父の手を強く握ったまま亡くなっていたから、棺おけの中には2人一緒に入って貰った。
ママの最後の願い。
生まれ変わってもパパと一緒になりたい。
私はきっと叶うと信じている。
だって私にこんなに都合のいい、幸せな生まれ変わりができたのだから。
きっと、来世でも2人とも幸せになれる筈だ。
私には、それを信じることしかできない。
カノイ・マークガーフ、41歳、二つの若葉が寄り添う冬の出来事である。
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