第167話:外堀の埋め方は人による
結婚、というものは難しいもので、しなければ行けないという人もいれば、したくないという人もいる。
例えば家のグロウは、
「昔はしたいと思ってましたが、今は荷が重いですね。人一人の人生を背負うというのは。」
なんていって結婚を怖がっている節がある。
個人的には昔から共和国好きだったことやこそこそミツキ宅におにぎりをご馳走になりに行っていることから2人がお似合いだと思うのだが、ミツキ側も、
「元罪人ゆえ伴侶を持つなどもったいのうございます!」
なんて言っていたので結婚までは遠そうだ。
それに引き換えソルテとメリルはゆっくりと交流を深める淡い青春を送っている。
見ていて幸せな気持ちになる微笑ましさだ。
鈍感と言われる私でもわかるくらいイチャイチャしているので結婚は秒読みだろう。
さて、そんなこんなでのこった子供はクルスだけとなった。
ここは叔父ちゃんが相手探しを手伝ってやるか~。
なんて考えながら部屋を出る。
「あ、おはようございます。カノイ様!」
「本日は朝食にデザートを付けてみました!楽しみにしていてくださいね!」
「良い子達いたわ。」
「「え?」」
そんなわけでこのお見合い作戦は決行されたわけである。
クルスはウェアウルフと人間の親善大使としての勉強をしたいということで王国とマークガーフ村を行き来する生活をしている。
そしてお世話係にはエードラムを付けていた。
つまり!ジョルジュとナナリーとの接点はない!
ならばどうするか。
お見合いしかないだろう!
え?良いとこの貴族に嫁入り?
それすると家から出ていっちゃうじゃん?
フロージとクーが悲しむじゃん?
なにより叔父ちゃんが一番嫌だ!
ということで身内でなんとかまかないたいのだ!
身勝手ですまん!
さて、とりあえずマークガーフ家の客間にフロージを呼んでみた。
そしてそこにジョルジュとナナリーを向かわせる。
「お帰りなさいませ。クルス様。」
「まずはお茶とお茶菓子をどうぞ。」
違う!そうじゃない!
もっとこう、フレンドリーに!
くそう!説明不足だった!
そう思い仲介に入ろうとした時、クルスがパッと顔を輝かせる。
「すごい!大貴族のおもてなしみたい!」
あ、どうも、大貴族です。
そう言ったクルスはジョルジュとナナリーを質問責めし始めた。
「何処で所作とかをまなんだの?言葉遣いには気を遣ってる?それとも自然と出てくる?剣も得意なの?お菓子も自分で作ったの?」
う~ん家の子のはずなんだけどな。
ほとんどウェアウルフ村育ったためか、どうやら同年代の使用人という存在が目新しく写ったようだ。
あ、どうも、大貴族です。(2回目)
「そっか~家って貴族だったんだ~。だから王国に行っても待遇がよかったんだね~。」
しっかりと話を聞いてみると、どうやら王国の貴族や使用人に関しては所作や知識量など家の村の住人の方が優れていることが多く、家の使用人に関しては大貴族の類いが雇っているレベルなんだとか。
マジか……王国がレベル低いのか、この村の教育水準が高いのか、考えどころである。
さて、それでお見合いがどうなったのかというと、エードラムが家に残ってジョルジュとナナリーが王国につれていかれることになった。
家の戦力がー!?
どうやら交渉には執事の存在があった方がよいのとメイドという立場なら年が近い方がありがたいということでつれていかれてしまった。
エードラムもニコニコしながら見送っている。
「良いのかエードラム!ちっちゃい頃からのお世話係だろう!」
「ええ、大丈夫です。クルス様は家事全般と武術なら王国の誰にも負けませんし、欲しいものはなんとしてでも手に入れる方です。」
「え?」
……お見合い大成功?
カノイ・マークガーフ、41歳、いつの間にか外堀が埋められて籍を入れたらしいことには気が付かなかった夏の出来事である。
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