第162話:子孫繁栄は愛ゆえに
「生まれたぞー!」
「次の木の実を持てぃ!」
「「ははー!」」
「待って展開が速い!」
お見舞いにきたその瞬間には赤子を抱えて飛び出してきた我が息子×2。
片方は伴侶に次の木の実を持ってくるよう催促までしていた。
「数日は安静にしていなさい!」
「「むぅ。」」
息子達に指導をしつつ子供の様子をうかがう。
それぞれイリーシャとヘリュックに抱かれた赤子は先月見たシェリルとチェリルの赤子より一回りほど大きい。
さらに言えば大きな鳴き声を上げながら暴れてすらいる。
「うん、聞かなくても元気な子だな。」
「その通りだよ~。大きく打て元気な子達だった~。」
かなり疲れた様子のエイルが遅れてやってくる。
「エイル~家の子達が動き回ってるぞ~!産後は安静にしなきゃだろ~!」
「やめてよ~さすがに出産2人分を終えて気が抜けてる時に大人6人の相手はきつすぎるって!」
「それはそう。」
誰も止める人いなかったのかな?と思っていたら部屋の隅っこでうつ向いているシュテル君の姿が!
「シュテル君……君は頑張ったんだね。」
「すみません母上様……お二人を止めることができませんでした……。」
「いや、流石に家の子フィジカルツートップは無理だよシュテル君。」
「せめてリインだけでもと思ったのですが……。」
「絶対勝てないリインに挑んでいっただけでもすごいよシュテル君。」
君は頑張ったよシュテル君。
「まぁまぁ!母子ともに健康!これ以上何にもいらんだろう!」
君はもうちょっと頑張ろうイリーシャ。
そしてカーロはしれっとルーナをベットに戻している。
偉いぞカーロ!
「むぅ、ねむねむ。」
「ルーナは昔から寝かしつけに弱いな~。」
ルーナはそういうと布団に潜り込んですうすうと眠りについた。
うん?待てよ?
「え、名前って勝手に決めていいの?」
「まぁ家族会議で決まってたし大丈夫だろ。」
「皆納得の上ですよ。」
「あ、リボル、ヴォイス。」
遅れてリボルとヴォイスの到着だ。
「孫が生まれたとは本当か!」
「あ!ルー!」
ウェアウルフ達も遅れて到着してきた。
今回はロボ、ルプス、ルーチェ、エードラムと親たちは全員集合している。
「長殿!生まれましたか!」
「おう、ロボ。ルーナとへリュックの子は無事産まれたよ。」
「長様!ルーナ様は?」
「ルプス、大丈夫、母子ともに無事だ。」
「長様!お二人にはお会いできますか?」
「ルーチェ、ルーナのほうは寝ちゃったからまた後でな。」
「長殿!お名前はマナ様ですか?ウル様ですか?」
「うん!?」
あれ!?そういえばウェアウルフ達に名前のこと言ったっけ!?
「はい!ルー様とエードラムから聞きました!」
「今回も長様がお名前を下さったと!」
「うーんあってるけどあってない!」
一応私が勝手に決めたわけではないぞ!
「ふっ、ウェアウルフ達にとっては名付け親が長殿であることは当たり前のことなのだ。」
……それもそっか!
そう考えるとへリュックとカーロは彼らが考えた初めての名前だったのか。
……。
「長様?」
「どうかしましたか?」
何となく名誉なことだぞ、と思いながら二人の頭を撫でる。
「そうだな~エイル!どっちのほうが先に生まれた?」
「リインとイリーシャの子だね。」
「じゃあこっちがマナだな。」
「ふむ、ならばこちらの子がウルか。」
そう言ってルーは赤ん坊を抱きあげる。
「……。」
「……なんだ?」
「いや~なれたもんだなって。」
結構積極的に子育てに参加してくれていたのだ、ルーは。
というかウェアウルフ全体が子育てに積極的だ。
ヘリュックもカーロもしっかりと愛されて育ってきたのは明白だしね。
「当り前だ。子は宝だからな。」
「うん、それは同感だな。」
「へへ!カノイママ!マナのことも抱いてやってよ!」
「うん!任せろ!」
リインに促されてマナを抱き上げる。
うん、親しみ深くて懐かしい暖かさだ。
「マナ、ウル、産まれてきてくれてありがとう。」
こうして名前の決めていた孫達は無事誕生した。
これからまだまだ孫は増えるのだろう。
それ以前に結婚する子も増えるかも?
それとも結婚しない選択をするのか?
どんな人生でも今後が楽しみだ!
カノイ・マークガーフ、40歳、数日の内には次の木の実を求めて行動しだす春の出来事である。
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