第158話:神話は誰かの一時創作
「そろそろ生誕祭って歳でもないか~?」
どうも、来年40歳になります。カノイ・マークガーフです。
そろそろお祝い事も代替わりをして子供達のものだけにしようかと画策中です。
「そんな!お祝いしましょうよ!」
「お祝いなんてなんぼあってもええですからのぉ。」
「むしろ全員分お祝いしましょうよ!」
「お前達……さては騒ぎたいだけだな?」
村人達がわらわらと集まってきては口々に祭りの開催を提言してくる。
うん、まぁ、楽しいもんな。お祭り。
「楽しいことはどれだけあってもいいんだよ。」
「まぁ、村人の方々もこういっていますし、別段問題もありませんし、今年も開催でいいんじゃないでしょうか。」
「リボル、ヴァイス。お前達も開催派か。」
というかさては皆開催派だな?
「シェリルも開催派~!」
「チェリルも~!」
「カロンもカノイ様お祝いした~い!」
「マロンもで~す!」
「うぅむ、可愛いお前達が言うなら、開催するか。」
え?子供に甘すぎるって?
しょうがないんだ。我が子は何時まで経っても可愛い子供なんだ。
たとえ20を超えようとも!
「カノイママちょっと失礼。」
「可愛い子に年齢は禁句だよ!」
お?どうやら自己肯定感が高い子に育ったようだ。
というかそれ、アイドルみたいだな。
「アイドル!カノイママ!アイドルになって!」
「え!?」
私もうすぐ40代!
「アイドルに年齢は関係ないって教科書にも書いてあったよ!」
「教科書に何書いてるの!?」
そう言えば転生賢者の記述にそんなこと書いてあったような……いやなんでだよ!
ドルオタでもいたんか!?
……いたなぁ。
とりあえずアイドルになってって何!?
「アイドル……象徴!」
「カノイママがこの村の象徴になるの!」
「えぇ……どういうこと?」
「永遠になるの!」
「この先もずっとずっとお祝いする日として残すの!」
「えぇ……なんで……なに?」
永遠に残すの?私の誕生日を?
「どういう物語にしよう?」
「やっぱり神話系で考えると神様と結婚したとか?」
「その場合リボルとヴァイスが神様ってことになるんだが……。」
「う~ん、じゃあ村の発展に寄与したとか?」
「それはみんなそうだな。」
「じゃあ皆神様?」
「う~ん、なんか違うくないか?」
皆神様になっちゃうのか?
「いいじゃないですか神様!勝手に信仰しましょう!」
「カノイ様もヴォイスも神童じゃったからのぅ。」
「リボルは鬼神のごとき強さって王都から来た人たちは言うしね!」
「ジェイルとエイルも神の使いみたいなもんだしな!」
「ファンは……本の神?」
「じゃあグルートは狩りの神だな!」
わはは!と笑いながら勝手に決まっていく神様としての役割。
いやいやいや!違うでっしょ!全然神様でもいないし!
「いや、でも能力的にはありでは……。」
「あれこそ神の御業ですよね……。」
「おい!こそっと言っても聞こえてるぞ!」
それは秘密って言ってるでしょうが!
「まあまあ!この子達が神様になるってことは私は聖女様かしら!」
「じゃあ私は主神かな?」
こっちにもそういう神話あるのか……。某宗教はないのに。
「フロージとヘディン様はカノイ様のご兄弟だからな。当然神だろう。」
「では、御三兄弟は豊穣の神。リボルは武神、ヴァイスは慈愛の神、ジェイルは秩序の神、エイルは医療の神、ファンは知恵の神、グルートは狩猟の神に当てはめて。」
「なんかかっこいい神話作ろぜ!」
「私は恋愛模様がいいと思うわ~。」
「皆好き勝手しすぎだろ!」
なんで神話作ろうとしてるんだよ!
「楽しいんだろ。新しいもの作るの。」
「楽しいんでしょうね。」
「皆がファンみたいになってしまう……。」
「ファンみたいって何よ!」
執筆中だったはずのファンが飛び出してきた!
「今回は何書いてるの~?」
「今回もスランプよ。もういっその事皆が言うように神話でも書いてやろうかしら!」
「お?やるか?」
「私にも案が!」
「こういう事件を解決したとかはどうだろう。」
「わぁ。やる気満々だぁ。」
もう勝手にしてくれ!
この後、ファンが書いた神話がちょっとした自作神話ブームを引き起こすのはまた別のお話。
カノイ・マークガーフ、39歳、地元でもなぜか神様にされそうになった春の出来事である。
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