第155話:代替わりの合間には立役者が一人はいる
「相変わらず分厚いな~。」
見慣れてきた封蝋の手紙。
本日のとどきたての一通だ。
まぁ当たり前のごとく王国からの手紙である。
さて、今日の用件は?
「え!?生まれた!?第一子が!?」
だ、第一王子の誕生だー!
ということでやってきました王宮!
「ヴェークさーん!生まれたって本当?」
「カノイ君!うん!本当だよ!見てこの子!」
そう言ったヴェークさんの腕の中には真ん丸可愛い赤ちゃんが!
「いや~頑張って産んだ甲斐あって可愛いね!」
「え?ヴェークさんが産んだの?」
「え?うん!王家の一子は王族側が産む決まりなんだよ?」
「そうなの?そうなのかぁ……。」
改めて、性別が迷子だ。
「そういえば私も第一子は産んだ側だったな。」
「そうなんだ!一緒だね!」
王族としての習わしとか関係なく、産む側だったな~なんて思い出す。
今思い出しても子供が生まれてくるということはとても素敵なことだ。
「わー!赤ちゃん!」
「可愛いね~!」
「ちっちぇー!」
「こんなに小さくて大丈夫でしょうか?」
「うむ。もっと肉を食わせるべきだ。」
今日は子供達が全員集合している。
保護者は私とルーだ。
なんでも共和国民、ウェアウルフ、王国民の友好を示すための招集だとか。
まぁなにはともあれルーナもルーも王宮に入れるようになったのはいいことだ。
「しかし、子供が生まれたからと言って何故長殿を呼んだのだ?」
「え?家族も同然だから一緒にお祝いしたくて。」
「そ、そんな理由で至急呼んだのか。」
「そうだよ?」
お互いに理解できないような顔をしていて話がかみ合わない。
こ、これが育ちの差!
環境の違いが如実に出ているが、まぁこういう交流も大事だよね。
「お祝いするー!」
「パーティー!」
「俺お菓子持ってきた!」
「ぼ、僕は昔読んでた絵本を持ってきました!」
「我はその、お守りを作ってきた。」
「皆……!本当にありがとう!」
「ヴェーク様!宴の準備ができました!」
「ありがとうサクラさん!さぁ!今日はいっぱい楽しんでいってね!」
「ヴェークさん!この子の名前は?」
「リアン、リアンっていうんだ!」
「よし!じゃあリアン君の生誕祭、スタートだ!」
「「「わーい!」」」
「で、本題って何?ヴェークさん。」
「実はね、私に何かあった時……あの子に何かあった時に助けになってほしいって、改めてお願いしておこうと思ってね。」
「縁起でもないな~何かあった時って何さ。」
「真面目な話、私はあまり長生きはできないと思っているんだ。ストレスを感じやすい体質だからね。」
「それはまぁ、うん、わかるよ。」
「もしあと10年生きられたとしても、リアンはまだ10歳……王位を継ぐには幼すぎる。」
「……。」
「一番は私がこの子が成人するまで生き延びることだっていうのは分かってる。けど、もしも、私が幼いこの子を残して死んでしまったときは……君に王位を継いでほしい。」
「……。」
「もちろん、ずっと王様でいろって話ではないよ?せめてあの子が成人するまで、いや、あの子が王位を継ぐのに相応しいと判断できるまで、王様の代わりをしてほしいんだ。」
「……。」
「どうかな?頼める、かな?」
「……あーもーしょうがない!王様やってやらぁ!」
「カノイ君!」
「その代わり、リアンが成人するまで!それは絶対変えないからな!それまでにリアンを立派な王位継承権一位の王子に育て上げておくこと!」
「う、うん!頑張るよ!」
「……それだけ守ってくれればいいよ。それだけで。」
長生きしろとは、気軽には言えなかった。
確かに強いストレスがかかる職についている彼が、そんなに長生きしているビジョンは思い浮かばない。
だから心の中だけで祈る。
どうか、ヴェークさんが幸せな人生を過ごせますように。
長生きしてくれよ?王様!
カノイ・マークガーフ、38歳、それはそれとして自分が王様になるとか国家存亡の危機を感じた夏の出来事である。
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