第154話:好敵手はよい練習相手
「カノイママー!シュテルと遊んでくるー!」
「うん?お~気を付けてな~?あ!ついでだからルーナ達にこのフィナンシェ届けてくれ!」
「えー!俺の分はー?」
「シグナルさんへの手土産の中に入ってるー!」
「やったー!」
最近のリインのお気に入りはシュテル君だ。
隣村まで走って行ってはお泊まりなんかもして帰ってくることもある。
それが面白くないのが一人。
「むー!」
「イリーシャ、遊びたいならお前も行ってこいな?」
「べっつにー!」
ぶっきらぼうにそう言うとイリーシャは森の方へと走り去っていった。
「気を付けろよ~!」
最近は大体あんな感じだ。
リインがシュテル君と遊び、イリーシャがすねる。
いや~青春だね~。
しかも私達の時代にはなかったタイプの青春だ。
にやにやしちゃう。
ちなみにリインはイリーシャがすねていることなど知りもしないので今日も元気に遊びに行った。
まぁ気がついていたらフォローするなりからかうなりするよな。
さて、ここで肝心なのがシュテル君の反応だ。
実のところ直接会う機会はそんなに無いのだが、こちらに来るときには大概リインと行動を共にしている。
つまり、嫌いではないのだ。
う~ん青春だね~。
久しぶりにシュテル君が家に来る日、リビングにはイリーシャが鎮座していた。
なんで?
「……。」
本人はいたって真面目な顔をしているから突っ込みにくい……。
そんなこんなしているとシュテルが訪問してきた。
と、同時にイリーシャが叫ぶ!
「おいお前!どっちがリインの婚約者にふさわしいか勝負だ!」
な、なんだってー!?
と、驚いているのは私だ!
シュテル君は冷静に返す!
「そんなのリインが決めることでしょう?我々が勝手に決めることではないですよ。」
そりゃあごもっとも。
しかし、肝心のリインは今お昼寝中だ!
「しょうがないだろ!あいつがそんなこと考えるわけ無いんだから!」
まぁ、告白されるまで好意に気がつかなかった実績のある親もいることですし、多分本人も告白されるまで好意に気がつかないタイプだ。
「……しょうがないですね。では、告白する権利をかけて、勝負しましょう。」
おぉと?シュテル君も以外と乗り気だ!
これを機に波にのって告白しちゃおうってタイプだな?
「で、何で勝負するんだ?」
「そりゃあ鬼ごっこだろ!」
「いえ、公平にテストが良いと思いますよ。」
「こらこら、自分の戦場に持っていこうとするな~?」
案の定、性質の真逆な二人はま反対の提案をさてきた。
まぁ、今回はしゃあないな。
「よし!じゃんけんで決めるぞ!」
「「えー!」」
「運と心理戦、一国の命運をかけられる崇高な勝負方法だ。とりあえずちゃっちゃとやっちゃえな!」
「「……最初はグー!じゃんけんぽん!」」
それからしばらく、じゃんけんはなぜかあいこが続いた。
息ぴったりか?
「カノイママ~なんかうるさい。」
「ん~?そりゃあ今一世一代の大勝負中だからな。」
「えー!なんの勝負?」
「リインに告白するための勝負。」
「…………え!?」
それから二人のもとにリインが突撃していくことでこの勝負はうやむやになった。
いや、
「俺、二人と結婚する!」
と、元気よく宣言したからリインの勝ちかもしれない。
家の子、強いな~!
カノイ・マークガーフ、38歳、懐かしいようで新しい光景をみた春の出来事である。
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