第150話:刑期を終えたら皆他人
「カノイ師匠!本年の年貢でござりまする!」
「お疲れ様でござりまする~。」
フキとミツキは毎年ちゃんと真面目に米を納品してくれている。
米ではなく麦では?と思う方もいるだろうが、彼等の得意分野を考慮した結果、こうなったのだ。
稲作ってなれてる人だとめっちゃ早いよね。
そんなわけで、
「おぉ!おめでとうミツキ!今年の分で完済だ!」
「本当でござりまするか!?」
そう言うとミツキはわんわんと泣き出してしまった。
なんで!?
「これで……これで、やっと皆に胸を張って仲間だと言えまする!」
「ミツキ、お前そんなことを……。」
彼等には罪人として刑罰を与えていた。
それとこの村の住人であることはなんの関係もないと、私達は思っていた。
しかし、本人は思っていたよりも思い悩んでいたようだ。
「そんなこと言うなよ~!ずっと一緒に生活してきただろ~?」
「わかっておりまする!皆が気にせず接していてくれるのは!しかし!某の心がそれを許さないのです!」
ま、真面目~!
良い子に育ったな~。
何はともあれよかったよかった。
ちなみに報告に行った先でフキも大泣きしていた。
大袈裟な気がするが、彼等にとって、これはとても大切なことだったのだろう。
「お米うま~!」
「おにぎり美味しいね!」
「気軽にお米を使えるようになったの嬉しいね~!」
「米にはなんでも合うからな~。」
「特にフキさんとミツキ君のところの米は甘味が強くて美味しいですよね。」
そうなんだよ!
旨くて品質の高い米が大量に手に入るようになったことで米食が盛んになってきた。
おにぎりにリゾット、炊き込みご飯に雑炊!
もうやりたい放題食べたい放題だ!
何を作っても美味しいね!
日本人たるもの、米を食わねば!
うまい!うまい!
「あ~けど米って食べすぎると太るんだよな~。」
「え?太るの?」
「お野菜、だよね?」
「いやいや炭水化物炭水化物。太る太る。」
「……マジで?」
「マジマジ。」
「健康には……問題ないですよね?」
「太らない程度ならな~。」
「「「ほっ。」」」
皆ばくばく食べてたからな~。
その辺心配になるよな。
「まぁ、今くらいなら大丈夫だろう!まだまだあるからゆっくり食べよう!」
「「「はーい!」」」
お米作り、初めは贖罪のために始めて貰ったことだけど、今後も続けて欲しいと頼んだら快く引き受けてくれた。
今後も美味しいお米が食べられるぞ!
カノイ・マークガーフ、37歳、懐かしい味がまた馴染み深い味になった春の出来事である。
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