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第143話:引継ぎは生前に行おう

「グロウ・リーベン。」

「はい!」


話は戻って今朝のこと。

「リインがサリバンを継ぐのなら、僕がリーベンを継いでもいいですか?」

「なんて?」

なんて言った?

「ですから!僕が!リーベンを!継ぎます!」

「……なんで!?」

なんで家の子達出ていこうとするの!?

「出ていきませんよ!家族は大事ですし……。」

「お、おぉ、よかった。」

うん?じゃあなんで?

「リーベン家も皆マークガーフになってしまったじゃないですか。ですから今はリーベン家も子無しの状態です。」

「まぁそうだな。」

「そして僕はお爺様から神職の何たるかを学んでいます。」

「そうだったな。」

「ですから、リーベンを名乗り、神職を継ぐ資格が僕にはあると思うのです。」

「う、うん、確かに。」

「なのでリーベンになろうかと。」

「決断早くない?」

「早くないです!リインがサリバンになってからずっと考えていたんですから!」

そんな、ちゃんと考えてからの決断なのか……。

「……わかった。グロウがリーベンを名乗れるように手配する。」

「ありがとうございます!差し当たって僕はリーベン家に引っ越しますね!」

「出ってかないって言ったじゃん!」

言ったじゃん!

「出ては行きません!一時的に引っ越すだけです!」

「一時的っていつまで!」

「お爺様が亡くなるまでです!」

「……!?」

「お爺様はご老体です。カノイママの言う60までももう目前、何時亡くなってもおかしくありません。」

「……。」

「出来ることなら、最後まで、一緒にいたいのです。お願いします。」

「……そういうことか。」

この子は何時だって死に怯えていた。

だからこそ、身内の死を寂しいものにしたくないのだろう。

「わかった。しばらくお世話になってこい!」

「ありがとうございます!」

「あと、本当に危なくなったら私達にも伝えるんだぞ?寂しくないよう皆で看取ろう。」

「……!はい!」

こうしてグロウはリーベンとなり、しばらくの間、リーベン家でお世話になることになった。


しばらくして、

「グロウ・リーベン。」

「はい!」

「グロウ・リーベン。私の可愛い孫よ。どうか、この教会を、神の木を大切にしてやっておくれ。」

「はい……!お爺様!」

「カノイ様。」

「はい。」

「カノイ様、ヴァイスを……幸せにしていただきありがとうございます。」

「そんな!私こそお世話になっているくらいです。」

「いいえ、あの子は貴方に出会ってから明るくなりました。きっと、あなたが思っているよりもずっと。」

「……。」

「ヴァイス、シュバルツ。おいで。」

「「はい。」」

「お前達がマークガーフ家に輿入れした時、私は本当に嬉しかったんだよ。あの人達は愛情深い人達だから、きっとお前達を大切にしてくれるだろう。」

「はい、お父様。」

「僕達は幸せ者です。」

「お前達の母も愛情深い人だった。私はあの人と一緒に慣れて幸せだった。お前達も、幸せな家庭を築くんだよ。」

「「はい、お父様。」」

「あぁ……私は幸せ者だ。息子や孫に見送られて、妻のもとに行けるのだから。」

「お爺様……?お爺様!」


「さて、お爺様のお世話も終わりましたので、リーベン家から実家に帰らせていただきます。」

「ん?良いのか?グロウはそれで。」

「はい、もう、思い残すことはありません。」

「そうですか。でもこれからも神官としてリーベンを名乗るのでしょう?」

「はい!もちろんです!」

「なら、もっと勉強しないとですね。」

「はい!」

こうしてお別れの時は過ぎ去っていった。

死は恐ろしく、寂しいものだが、大切な家族がそばにいてくれる、それだけで、その恐怖は軽減されるのだろう。

カノイ・マークガーフ、35歳、先人達から大切なものを受け継いだ夏の出来事である。

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