第135話:動物の相手は体力がいる
「カノイ師匠!俺達にもっと訓練を付けて下さい!」
「なんだなんだ?どうしたどうした?」
突然授業中に立ち上がって発言したのは冒険者の息子、エリンである。
彼らも家の住人になったので学校を開いて授業を受けてもらっている。
「俺達全然村の人達に勝てないんだ。」
そういうのはもう一人の冒険者の子、デニス。
確かに家の村の子達は基本的に小さなころから戦い方を学んでいる。
要するに単純に強い。
この数年で学び始めたエリンとデニスでは太刀打ちできないのだろう。
「某は負け戦でも経験となると思うのであるがな~。」
この特徴的な話し方をするの子はミツキ。
以前共和国から来た移民の子だ。
出会ったばかりの頃は小さな幼子の様だったが今ではなかなか大きく育ってくれている。
「へリュックは戦い方が違うから大人に稽古を付けてもらってます!」
「カーロもです~!」
「ずるいずるい!俺達も稽古稽古特別稽古!」
「う~ん、分かった。ちょっと考えてみるわ。」
「よし!エリン!デニス!特別稽古だ!」
「おう!なになに?」
「なにをするんですか?」
「それは……。」
「わんわんわん!」
「「え。」」
「お~よしよ~し。いいか?噛みつくのはNGだからな?甘噛みはいいぞ~。」
「嘘だろ!?」
「マジか……。」
「よし!これからこのケルベロスの遊び相手をしてもらう!家の子供達は皆この子と遊んでるからな~。」
「「ひぇー!」」
「あ!こら!嚙むな!嚙むなよ!」
「どこまでも……どこまでも追いかけてくる……!」
「はっはっはっわん!」
「よだれでべたべただ……。」
「体力が持たない……。」
「よーしよしよし!とってこーい!」
「キャンキャンキャン!」
「お前達~よく頑張ったな!初日でこれは偉いぞ!」
「しょ、初日……?」
「まさかこれからも……?」
「うん!毎日遊んであげてね!」
「「ぐぇ。」」
と、まるで遊びのように見えるが、実は家の子供達は皆ケルベロスに狩りを教えてもらっている。
じゃれあいで攻撃、防御、回避方法を覚え、追いかけっこで体力をつける。
意外と理にかなった訓練なのである。
ということでエリンとデニスにはしばらくの期間ケルベロスと遊んでもらうこととなった。
数日後、普通に羨ましがったミツキが参加してきたので結局皆この道を通るんだな~。
カノイ・マークガーフ、33歳、楽しく鍛えられる方法を流布した夏の出来事である。
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