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第126話:終の棲家は慎重に選ぼう

シェリルとチェリルが成人して一安心したり、思わぬ恋愛事情にてんやわんやしたりした。

そんな話を静かに聞いているのは私のもう一人の伴侶、ルーだ。

「でさ~まだ結婚は早いけど、恋人ができたことは素直に嬉しいんだよな~これが。」

「ふむ、ではよいではないか。」

「でもやっぱり寂しいよ~。息子がどんどん遠い存在になっていくような感じ?」

「長殿には我ら伴侶がいるではないか。寂しがることはない。」

「え、かっこいい。確かにずっと一緒にいてくれるもんな。」

「うむ、我の群れはここを終の棲家にする所存だ。」

「ありがとな~これからもよろしく~!」

ウェアウルフ一同は思っていたより私のことも、この村のことも気に入ってくれているらしくとても嬉しい。

「しかしな、ウェアウルフと人間では寿命が違う。何時かは別れの時が来るぞ。」

「え、そうなの?ウェアウルフの寿命ってどれくらい?」

「おおよそ200年。人間の倍以上は生きるぞ。」

「マジか、何故か少ないほうかと思ってた。でもそっか~じゃあ私達は確実にお前を残して死んじゃうんだな~。」

「……。」

「寂しいか?」

「……そうだな、寂しくないといえば嘘になる。しかし、共に生きた証はきっと残り続けるだろう。」

「……あのさ、もし私が死んでもさ、この村を守っていってくれないか?ほら、ルーナと同じく私達の子供みたいなもんだし。」

「愚問だな。」

「え。」

「……終の棲家にすると言っているではないか。最初からそのつもりだ。」

「あ、そっか……そっかぁ。」

なんというか、にやけるのが止められない。

もう大好きじゃん!普段そんな感じあんまり出してこないのに!

「そうでもないぞ?普通に愛しているし普通に感謝もしている。」

「声に出てた?というか感謝?」

「あぁ、長殿のおかげで安全な住処と立場を手に入れることができた。奴隷や兵士として登用することもできたのに、だ。」

「そんなことはまぁしないけど、そんなことされる可能性もあったのか。」

強いもんな。ウェアウルフ。

それにしても奴隷か~いるのか?この世界に?

なんか、正規の奴隷みたいに衣食住整ってそうだな。

現代では奴隷って言うと過酷なイメージだけど、昔は住み込みの肉体労働者みたいなものだったとも聞いたことがある。

まぁでも人権をないがしろにしている部分もあるのだろうから奴隷に忌避感を持つのは当たり前か。

「そんな人生もあったかもしれない中で、愛情を注ぎ、人として生活できるレベルの教育を与えてくれた長殿にも村の人々にも感謝してもしきれん。」

「あはは!家ではそれが当たり前だからな!」

そう、当たり前すぎて忘れがちだが、この村の教育水準、というか人間力はこの世界の中では高い方らしい。

冒険者一同も驚いていたな、なんて思い出す。

「……それを当たり前といえるお前達だからこそ、護りたいと思ったのだ。」

「え、あ、ありがとう……。」

家の伴侶さんかっこいいな。

リボルもヴォイスもかっこいい部分も可愛い部分もあるけど、ルーは飛びぬけてかっこいい性格をしている。

なんというか、男らしいやつだ。

くそぉ!こんなにもふもふで可愛い見た目をしているのに!

「ふむ、長殿はあれだな、我々の尾や耳が大好きだな。」

「分かる~?もふもふで気持ちいいんだよな~。」

ルーもルーナももふもふしていて触り心地が最高なのである。

もふもふと撫で繰り回すと気持ちよさそうに目を細めるこの反応が愛おしい。

こればっかりはウェアウルフに対しても村人達に対してもやめられない。

「さて、そろそろ夕餉の時間だろう。」

「あ、そっか、じゃあ帰るか!」

そう、ここはウェアウルフ村、私達が帰るのはマークガーフ家。

ルーも大切な家族の一員だ。

「今日はリボルが張り切って狩りに出かけたから新鮮な肉が出てくるぞ~!」

「ほう、それは楽しみだな。」

のんびりと歩きながら平和な村を眺める。

この平和も数年の月日をかけて築いてきた大切な財産だ。

大切に、していってほしいな。

「あぁ、大切にするとも。一生をかけてな。」

カノイ・マークガーフ、31歳、もう一人の伴侶に心の奥底をさらけ出した春の出来事である。

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