第114話:採用は上司との相談の上行いましょう
春が来た。もう春か。
そんなことを思いながら、私はのんびりと布団から這い出る。
そして、窓を開けて空を見上げると……そこには雲一つない青空が広がっていた。
「うん、いい天気だな。」
そう呟き、身支度を整えるために洗面所に向かう。
すると、そこには既に先客がいた。
「あ、おはようございます。」
「ああ、おはよエードラム……。」
……ん?待って?なんかおかしくね?
何で当たり前のようにこの人がここにいるの?
え、私この人泊めたっけ?あれ?
いやそもそもなんで私の家にこの人がいるの?
もしかして、泥棒とかじゃないよね?
でも、この人は泥棒するような人じゃないし……。
そんなことを考えていると、彼は笑顔でこう言った。
「どうしました?」
「いや、ここ私の家だよね?」
「はい!長殿の家です!」
元気にそういうのはウェアウルフ村の若者エードラム。
なんでいるの?
「なんでいるの?」
え、ほんとになんでいるの?怖いんだけど!
「はい!実は先日よりメイド教育を受けておりまして、住み込みで働かせていただいております!」
「え?そうなの?」
そういえば執事は数人雇ってたけどメイドは今いるリリアとイザヴェラだけだったな。
「私共ももう年ですし、次に引き継がねばと思い、お仕事を探していたエードラムさんにお声がけしたのです。」
「勝手なことをしてしまい申し訳ございません。」
「いや、いいよ、ありがとう。そうだよな。今後のことを考えると若い人が数人はいたほうがいいもんな。」
そこでエードラムに声をかけたのはナイス判断だな。
確かエードラムはまだ22歳だったはずだ。
年下か……もう私も28歳になったんだな。
60歳まであと32年か、まだまだ長いな人生。
「お兄ちゃん!お家にエードラムさんがいる!」
「にーちゃ!エードラムがいる!」
「そうなんだよ。実は将来的にメイドとして働いてもらうことになってな。」
フロージとヘディンもエードラムを発見したようだ。
何の説明もなしに急にいたらそりゃあ驚くよな。
まぁ今後は事前に連絡するようにと言い含めて顔を洗う。
さて、今日も仕事するか。
「誰だ~書類の順番間違えたの~?」
「あ、あたしじゃないわ!」
「ヘディンでもないよ!」
「……俺でもないかと。」
「……うぅ、フロージです……。」
「正直に言えて偉いな~けど失敗したらその時に報告しような?」
「はーい……ごめんなさい。」
「よーしよしよし。」
執事として働いてくれているファンとグルートも大分手慣れていているし、フロージとヘディンもちょっとしたミスはあるもののちゃんと仕事ができるようになってきた。
これは私がいなくても大丈夫そうだな!
「お兄ちゃんは絶対にいて!」
「カノイ様がいないと処理できない書類もあるのよ!」
「いや!領主の仕事は父上に回してよ!私まだ引継ぎしてないよ!?」
今日も外遊という名の旅行で父上も母上もいないしさ~!
はぁ……まぁ元気なうちに好きなことしておいてほしい気持ちもあるし、頑張るか。
カノイ・マークガーフ、28歳、久しぶりに仕事について考えさせられた春の出来事である。
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