第108話:便りが無いのは良い便りというが、急にきても困る
秋ですね。
どうも、平和にかまけて美味しいものたっぷりいただいているカノイです。
そんな私は今、非常に悩んでおります。
何にって?そりゃあもう、このお手紙の件についてですよ!
「カノイ様、どうかなさいましたか?」
「いや、あのね?手紙がさっき届いたんだけど……。」
「どれですか?」
「これなんだけど。」
そう言って私がヴァイスに差し出したのは、見覚えのある封蝋がされた一通の手紙だった。
その封蝋には、どこかで見たような家紋が入っている。
もしかしなくてもこれは王家の家紋だ。
「中身見るのが怖いよぉ。」
「でも見ないでいるわけにもいきませんよ?」
「そうなんだよなぁ。」
順当に行けばヴェークさんからの手紙なんだけど、あの人にしては手紙の枚数が少ない気がする。
なんというか、あの人なら10枚20枚書いてきそうじゃない?
え?偏見?そうかも……でもとりあえず言いたいことまとめても1枚にはならなそうなんだよな。
しかし!届いた封書はペラペラ!紙1、2枚分くらいの分厚さだ!
というわけで、結局のところ誰から届いたのかよくわからない。
正直怖いよぉ。呪いの手紙とかだったらどうしよう。
魔法もある世界だからあったら結構やばいものがきそう。
………………。
ええい!思い切って開けるか!
ぷちっと封蝋を剥がして中身をそろっと確認する。
…………ん?
「招待状?」
「なんのですか?」
「なんか、お見合いパーティー?らしい?」
「ほう、浮気ですか?」
「嫌私のじゃないよ!?」
というか多重婚はあるのに浮気の概念もあるの!?
「ヴェークさん……現国王のお見合いだよ。」
「え、あの方未婚だったんですか?」
「うーんどうやらそうみたい。」
「しかし何故カノイ様を招待したんでしょう?」
「あー……それは、2枚目に書いてあったわ。」
「なんと?」
「ヴェークさんが乗り気じゃないからご友人に一緒に参加してほしいって。」
「あぁ……お国の偉い人方も大変ですね。」
「そうだね~。」
まぁそんな感じで、複数回開催されるお見合いパーティーこと晩餐会に参加してほしい、らしい。
「久しぶりに行くか~王都。」
「折角ですし子供達を連れて行きませんか?」
「え?大丈夫かな?」
「僕達も一緒に行けば大丈夫ですよ。領地のことはお義父様とお義母様に任せておけば大丈夫でしょうし。」
「うーん、そうだな!一度連れて行ってみるか!」
子供の可愛さを知ればヴェークさんの意識も変わるかもしれないしな!
「仮にも招待客として招かれるということは、そういうことでしょうねぇ。」
「うん?ヴァイス、なんか言った?」
「いえいえ!当日は僕も着いていきますからね!」
「はーい!宜しくお願いしまーす!」
前回とは違って一人じゃないのは心強い!
ヴェークさん自体は嫌いじゃないからいい人が見つかるといいな~!
カノイ・マークガーフ、26歳、遠方からの便りに一喜一憂することとなった秋の出来事である。
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