第104話:創作物は世に出すだけでえらい
今日も今日とて世界は平和だな~。
「カノイ様ー!出来たわよー!」
「え?何が?」
「何がって、小説よ! し ょ う せ つ !」
「………………あぁ!そんな話あったな!」
すっかり忘れてた!
「忘れないでよ!恥を忍んで読んで貰おうとしてるんだから……。」
「ごめんごめん!それで?肝心の小説は?」
「あれよ!」
と、指をさされたのは荷馬車、荷馬車!?
「え~多くな~い?」
「そうよ!超大作よ!」
「約束だから読むけどさ~これ一般的に読む人少ないと思うぞ?」
「う……ま、まぁ読んでくれる人も偶にはいるでしょ!」
そうして私はファンの超大作小説を読み進めるのだった……。
……。
「面白いな、これ。」
「……!で、でしょ!」
「特にこの主人公のカムイが行く先々で人と交流していくのが見ていて楽しい。」
「でっしょ~!」
「最後のところの運命の竜が敵じゃなくて運命の相手だったって落ちも優しい世界観とマッチしていて面白い。」
「そうなの!最初は敵キャラとして作っていたんだけど、カムイは絶対この子を放ってはおかないって思ってね!」
「……で?売るの?」
「へ?」
「本気で売る気なら15商会に紹介状書くぞ?」
「お、え、う、あ!?」
創作物って外に出す時は緊張するよね。
分かるけど、頑張りたいなら応援したいのも事実。
さて、どう出る?
「……………………。」
「……………………。」
「……よ、宜しくお願いします!」
「よし!まかせろー!」
ファン頑張った!
「ということでこれ売り出したいんですけど。」
「まぁ本を買うのなんてほとんどお貴族様ですし、長編でも大丈夫だと思いますよ?」
「よかった~。あ、じゃあ本として出版していただける形で進めても?」
「……うーん、話もちゃんとできているし、一回売ってみますか!」
「わーい!宜しくお願いしま~す!」
わーい!
「ところでこのカムイって私がモデルであってる?」
「なんでわかったの!?」
「いや、名前が似てるな~と思ったところから芋ずる式に。」
「うぅ……そうよ!あたし達のヒーローって言ったらあんたでしょうが!」
「え、そうなの?」
「そりゃそうでしょ!どんな問題でも解決してくれて!いろんなところに行ってて!それでもあたし達を一番大切にしてくれるんだから!」
「え、えぇ?」
「ヒーローよ!カノイ様はあたし達のヒーローなの!」
「て、照れちゃう。」
え、そんなに褒められると照れちゃう。
「ふぅ!わかったら大人しくモデルになってなさい!」
「は~い。」
照れちゃうけど、自分のやってきたことをこうやって評価されると嬉しいな。
へへへ!いつか年を取ったらまたこのことでファンをからかおっと!
カノイ・マークガーフ、25歳、いい創作物に出会い、いいご縁に出会った秋の出来事である。
感想、レビュー、ブクマ、評価、待ってます!