5話 事情聴取されました
ははは、あの修羅場を体験して生きて帰れた俺。すごいと思わない?いやはや、身が持たない空間でしたね。涼深の対処法なら心得ていたつもりだったんだけど、周防見さんを交えた解決方法は知らないわ。てか知らなくて当たり前なんだよな。だって周防見さんとは昨日さっき会ったばっかだし。
ヤンデレ化の能力のせいでなんかぐいぐい来てたけど、普通初日であんな活発にアピール入れてこないから。いやすんげぇなこの能力。あ、なんか今めっちゃ厨二っぽいこと言ったかも。ってのはどうでもよくて、今後の周防見さんに対してどうするかだよなぁ。なんかまた会う的な流れになってラインのQRコード渡しちゃったけど。
ま、そこは周防見さんの出方次第でいいか。今日はなんかすんごい疲れたからさっさと寝たい気分。はよかえって風呂に飛び込みたいわ。5月下旬って言っても夏みたいに馬鹿暑いし、なんかむしむしする暑さだよね。気持ち悪くて嫌い。我が家には俺の平穏が確約された理想郷が…
あるわけありませんでした…
なんで俺の家の前に涼深がいるんだよ!もう疲れたから今は誰とも関わりたくないんだ!俺に安息を与えてください。ほんとにお願いします。
「あ、あのぉ。涼深さん、何かご用件でしょうか?でしたら明日以降に…」
「いやね。それはできない申し出よ。」
「そう言われましても。もう営業時間外なわけでして…」
「問答無用。周防見さんのことについて何かありそうだからね。きっちり聞かせてもらうわ。」
やっぱりそのことかよぉ!そんなの明日でもいいじゃねえか!一刻を争ってでも聞きたいことなのか?俺の安息を踏みにじってまでも?今日は次から次へと面倒なことがいっぱいで…もうこれ時給発生してもいいくらいの苦労を背負わされてるって。こんちくしょー。
「周防見さんのこと、そんなに気になるの?」
「えぇ、だからここで待ってたの。いいから早く家に入れて。」
「はぁ。もういいです。ちゃんと話します。」
「よろしい。」
事故、能力覚醒、修羅場ときて次は事情聴取ですか。だいぶ濃い1日だな、おい。
「で、俺の部屋にやってきたのはいいんだが。涼深は周防見さんの何が知りたいんだ?」
「それは、今日会ったばっかりなのに周防見さんとの距離があまりにも近すぎる件についてよ。」
「ほ、ほぅ。それはまぁかくかくしかじかというか。」
「あ?かくかくしかじかでわかるわけないでしょ。マジメにお願い。」
「わかりました。話すよ。信じてもらえないかもしんないけど…」
俺は涼深に今日の放課後にあったほんとは起こるはずだった事故や能力についてありのまま話した。涼深は俺の話をにわかには信じがたいよなぁみたいな、なんか煮え切れない表情をしながら聞いてくれていた。俺だって今日のこと、未だに信じられないから話を聞いてそんな顔になるのは割と間違いじゃない気がする。というか現実にあっていいことではないんだよ!ほんと大変なんだからこっちは…
「なるほどね。実際に起こった話とはやっぱり信じがたいけど。」
「まぁそうだよな。俺もそう思う。」
「でもそれが本当だったとして、なんであたしはそのヤンデレ化?の能力が効いてないわけ?そこも素直に信じられないポイントなのよね。」
「確かに…」
「あんた気付いてなかったの?はぁ、呆れた。」
「そ、それは。なんか涼深とは付き合いが長いからさ。なんか現状が自然すぎて気になんなかったんだよ。」
「まぁ、だとしたらしょうがないわね。それはそうとあんた学校生活どうする訳?うちの学校女子多いし。」
「それなんだよなぁ。クラス全員をヤンデレにしてしまいかねない。」
これは今後考えるべき課題の一つである。うちの学校はなんか都合よく女子の比率が高い。まぁこれは昔女子高だったからって言うのが関係してるんだろうか。でも涼深のように何らかの要因によってヤンデレにならないという女子もほかにいるのかもしれない。そういう女子が多いことを祈るばかりだ。
「でもまぁ、俺と関わらなければいい話なんだよな。実際。俺はこれからはやむを得ないとき、重要な時、緊急時以外誰とも喋らなければいいんだな。」
「それでいいとは思うんだけど…ちょっとね。」
「ん?あぁ、別に寂しくねぇって。男友達もそれなりにいるし。それに涼深がいるだろ?同じクラスなんだから、たまに話しかけに来てくれればいいって。」
「まぁそれでいいんならいいけど。」
「おう。んじゃまぁもうそろ飯もできるだろ。行こうぜ。」
「う、うん。」
とりあえず涼深からの事情聴取も終え、飯も食い、ようやくの俺が求めていた平和な時間に…なるんですねそれが。もう何もしたくないです。俺脱力モード。明日まで1ミリたりとも活動いたしません。
明日も学校がある。これからの生活は決して楽なもんではないだろう。だからしっかり寝て明日どんなことがあったとしても挫けない精神のため、早く寝るとする。そんじゃ、おやすみ。
つづく
周防見さんはナンパされるくらいなので超絶かわいいという設定です。
そんな子にぐいぐい来られる來八君がうらやましいですね。(ちゃんと涼深もかわいいですよ)