世紀の実験 (コギト・エルゴ・スム)
生命とは一体何なのか。
テセウスの船
手塚治虫先生に捧ぐ。
時は西暦2045年
マッドサイエンティストとして世に知られるA博士は、世紀の実験を試みようとしていた。
どこからが機械でどこからが人間なのか、その境目を探ろうというのだ。
髪の毛や歯といったものから始まり、指や両手・両足、眼球や声帯、耳といったものを数十年をかけて徐々に機械に置き換えていった。
内蔵も、胃や腸、肝臓といったものを徐々に置き換えていき、心臓も人工のものへと置き換えられていた。
脳の記憶領域である海馬や大脳皮質も外部の記憶媒体へと置き換えていき、残すは大脳本体だけとなっていたのだ。
それを、現在の科学の粋を尽くした最新のAIを搭載したスーパーコンピューターに博士の思考や経験・知識を学習させ、博士の大脳に置き換えようというのだ。
そのスーパーコンピューターは36階建てのビルの各フロアに所狭しとびっしりと林立されていた。
データを送り込む無数のコードが伸び、それらが博士の脳へと繋がれ、博士の合図とともに、取り巻きの助手達が一斉にスイッチをONにした。
博士の生体脳とスーパーコンピューターが一旦同期し、博士の生体脳に繋がれていた養分を送るチューブと生命維持装置が外された。
***
「博士、博士、ご気分はいかがですか」
助手の一人が声を掛けた。
数多の助手は勿論のこと、マスコミも注目を集める中、大脳がスーパーコンピューターに置き換わった博士がモニターに映し出され、第一声を発した。
「ワタシハ、イッタイダレナンダ。。」
一瞬の静寂の後、拍手喝采の渦が巻き起こり、世紀の実験は大成功を収めた。
話は変わりますが、手塚治虫先生のブラック・ジャックは大好きな作品の一つです。
あと、鉄腕アトムの第一巻があんな感じだとは知りませんでした。