孵花
肩の痛みに
種の植わっているのをおもう
昼下り
放火
花屋の軒先
黒猫
影かな、と
ひかりのまじった
影、かな
どっちつかずな
くらがりをえらび
体温をあずけてみる
世界は遠ざかり
すべては
やけおちていく
影に
……くらがりで
じっとしていると
痛みをおもいだすから
まだただれつづけよう
ずっと
ずっと
ずっと
(肩に植わった種は
骨に、根をからませていく)
(肩に植わった種は
心臓まで、根をはりめぐらしていく)
くしゃみをする
黒猫はなぁと鳴く
五月
嚥下して、こころ
(ぱたぱたと夢がさんざめくわ)
永遠などない
花が咲くだけ