1章の25
「この中にぃ~、人ならざる者はぁ~、4人いますぅ~。」
4人もいるの?誰だよ。
「まずぅ~、貴方ぁ~。」
グリフォンの巫女、ティアが指を刺す。
一人目の人外は・・・・。
・・・・俺だった。
え、俺?俺、人間じゃなかったの?
「この人はぁ~、普通の人とぉ~、明らかに違うぅ~、神気を内包していますぅ~。人間に化けたぁ~、神様ですかぁ~?」
ああ~そういう事か。
「あ、ご挨拶が遅れまして申し訳ありません。俺は神様の神子、アレンと申します。」
神様の一番近くで働いていたからな。神様の力か何かがティアさんの『真実の目』に干渉してしまったのだろう。たぶん。
「えぇ~、神の村の神子様であらせられぅらろましたかぁ~。」
「何言ってるか分からんわ。」
ホホーさんのツッコミが入りましたー。
「この方は神の神子殿だ。人ならざる力を持っているのは間違いないが邪神ではない。」
「そうですかぁ~、ではぁ~、この人はどうですかぁ~?」
イヌーオさんの方を向き指を差している。
あぁ、うん。見た目的に普通ではないという点では間違いはだろうけど。
「この方からはぁ~、この世のモノとは思えない力を感じますぅ~。たとえるならぁ~、膨大な愛ぃ~?」
「愛か、流石は美しき『ラブ・ウォーリアー』イヌーオだな。」
ホホーさんが勝手に二つ名を付け始めた。やばいな。かなり好かれているっぽい。いや別にやばくはないのか?
「ティアさん。その人、イヌーオさんはちょっと異世界の力を使っているみたいなんですよ。詳しくは省きますが一旦保留で。」
「え、保留なんですか?私は邪神ではありませんぞ!?」
得体の知れない力を使っていることには間違いないからね。
そういえば『きらりちゃん』の人格はどこ行ったんだ?
「イヌーオさん、きらりちゃんの人格はもういないんですか?ちゃんとイヌーオさんの記憶と統合できたんですか?」
気になったので聞いてみる。
「ああ、きらり殿の人格というか記憶は今、私の中にいます。どうも私の中に新しくきらり殿という別人格が形成され、愛の力を操れるみたいですが戦闘時には私自身が力の扱いに慣れていないためにきらり殿という人格が力を操るのに集中しているため表に出てこれないみたいですな。」
ふむふむなるほど。
「長い、3行で。」
「きらり殿は、このドレスを作るのに、とっても忙しい。」
「オッケー。把握した。」
じゃあイヌーオさんが力をうまく扱えるようになったらきらりちゃんの人格が出てくるのかな。
「で、あとは誰が怪しいのだ?」
そうそう、あと2人いるからね。
「そこのぉ~、イヌーオさんって人がぁ~、抱えてるぅ~、少年がぁ~、おかしいですねぇ~。」
「ああ、そうです。これが邪神です。さっき捕らえました。俺たちはもう一人いるはずの邪神を探してるんですよ。」
そういえばちゃんと説明してなかったね。ごめんね。
「ではぁ~、最後のぉ~、一人がぁ~、邪神なんですかねぇ~。」
ティアさんが目を向けた先、そこにいたのは・・・。
「おやおや、まいりましたね。」
チユーシ先生・・・。
「貴方のぉ~、魂がぁ~、そこの少年とぉ~、一緒でぇ~、真っ黒になってぇ~、見えないんですよねぇ~。」
まさか貴方が・・・。
「貴様が邪神だったのか。チユーシ。」
「まってくださいよ。私は見た目通りのしがない医者ですよ?急に邪神とか言われても困ります。」
たしかに一見して弱そうだ。強者特有の気配もない。ただの小太りのおっちゃんにしか見えないが・・・。
「何かの間違いでは?そもそもティアさんだって本物かどうかも分からないじゃないですか。そんな人の話を鵜呑みにするのも如何なものかと。」
むむむーむ・むーむむ。確かにグリフォンの巫女ってのも証拠がない。グリフォン様はずっと寝てるから証明しようがない。
どこかでこちらの情報を探られていたなら『真実の目』の効果も偽ることは可能だろう。
本当は『真実の目』なんて無いのにそれっぽいことを言って信じ込ます。詐欺師の手口でありそう だ。
「信じてください。私は無実です。むしろティアさんこそ邪神なんじゃないですか?だいたい目の前の牢獄でアゴーさんが殺されてるんですよ。なのに気付かずにグリフォン様の上で寝そべっているなんて普通ありえますか?」
チユーシさんが饒舌に疑問を口にする。
急に饒舌になるとか怪しい気もするけど言ってることはもっともだ。
う~んどっちが本物だ?
「わたしに良い考えがあるわ。」
おお、困ったときのミア先生。さすがミア。さすミア。
「ナイフで刺したらいいのよ。死んだら人間。死ななかったら邪神よ。」
ああ、困った人だミア先生。さすなミア。さすミア。
「却下で。」
「じゃあ毒・・・。」
「却下で。」
「拷問・・・。」
「却下で。」
「身ぐるみを剥ぐ・・・。」
「それだーー!!・・・いててて嘘です冗談です!!」
耳がちぎれる~!
「夫婦漫才はその辺にせよ。」
はーい、ごめんなさ~い。ミアがくねくねしだした。なんだ気持ち悪いな。
「ホホーさんはなんか良い案とかないですか?」
正直俺はお手上げです。
「あるぞ。」
あるんか~い。
「どうするんですか?」
「簡単なことよ。」
ホホーさんがイヌーオさんとショー君に目配せをする。
2人はうなずきロープを手にした。ちなみにイヌーオさんは小脇に少年を抱えたままロープを構えている。
「両方捕らえよ。双方ともに神様のもとへ連行する。」
なるほどね~。疑わしきは拘束、のちに裁判。ってことね。
ショー君とイヌーオさんが動こうとしたその時・・・。
「やめてくださいよ。今、神様に会うのはまずいんですよね。」
チユーシ先生の周りの空間が歪みだした。
黒い邪気とでも言おうか、オーラのようなものが体から吹き出ている。
「正体を見せたな、邪神よ。」
チユーシさんの体が倍以上に膨れ上がり腕が2本背中から生えて4本になった。
やばいね。なんだかとっても強そうだ。
今度こそ物理攻撃が効けばいいな。もしまた効かなかったらどうしようか。
一か八か、アレを試してみようかな?