1章の19
「これより・・・・・・一介の兵士であり門番の任を解く」
「ど、どうしたんですかホホーさん。いきなり任を解くって。」
説明プリ~ズ。
「一介の兵士であり門番よ。汝、名をなんと申す。」
お、聞いてくれた。もはや名前が一介の兵士であり門番になりつつあるからね。
「はっ!ショーグンと申します!」
一介の兵士であり門番なのに将軍なの?ややこしいな。あ、もう一介の兵士であり門番ではないのか。
「ではショーグンよ。汝は今より我が国の秘密諜報員として神子アレン殿に対するスパイ活動を任ずる。」
ええ~!?俺の目の前でスパイ活動を宣言しちゃったよ。
「どどど、どういう事でしょうか!?僕がスパイ?そんな、無理ですよ!」
「貴様は今よりアレン殿と共に行動しその情報を逐一私に報告するのが仕事となる。これは決定事項である。」
いきなりすぎるしスパイの意味ないし。どゆこと?ショーグンさん、いや見た目的に同い年か年下 っぽいからショーグン君?も困ってる・・・いや目を輝かせてるよ。ショーグン君?
「なるほど。了解いたしました!ではこれよりアレン殿と行動を共にし、できる限りアレン殿をサポートしていきます。」
「うむ。働きに期待する。人事などはブッチ、貴様の方で手配をしておけ。」
「了解いたしました。」
え~と?こういう時は教えてミア先生!
宙づりのまま紅茶を飲んでいる器用で賢いミアなら今のやり取りの意味が分かったはず。
「つまりはこういう事よ。」
おお、理解していたのか、さすがミア。
「貴方は神子であり、他国のVIPなわけ。その行動を制限したりするわけにはいかない。けど野放しにするわけにもいかない。国のトップとしては貴方の情報を逐一調べないといけない訳よ。まぁ普通は密偵に調べさせるものなんだけどね。あえて貴方の目の前でスパイ活動を宣言することで裏で動いたりしませんよ、っていう友好の証ね。まぁ裏で動こうが関係ないんだけどね。密偵とか秒で消すし。」
ふむふむなるほど。
「難しい。簡潔に。」
俺は政治的な話とかよく分からんのだ。
「みんなアレンが大好きって事よ。」
そうなのか。照れるな。俺もみんな大好きだよ。
「そういう訳でアレン殿付きの召使いだとでも思ってください。これからよろしくお願いします!」
おお、ショーグン君が元気に挨拶をくれた。
「召使いとかいらないよ。友人としてよろしくね。ショーグン君。・・・呼びにくいからショーくんね。あと敬語はいらないからね。殿とかもやめてね。」
「了解しました。アレンさん。改めて、よろしくお願いします!」
「うん、よろしく。」
ちゃーちゃーらーちゃらららーちゃーちゃーらーちゃらららー♪ちゃらららーらーらーらーらーらーんらーん♪
なんか変なBGMが聞こえる。
「ショーグンが、ナカマになった。」
後ろから抑揚のない変な声が聞こえた。誰?
振り返ると本が浮いていた。あ、これ「勇者のススメ」だ。完璧に存在を忘れていた。
本が突然俺の頭を叩き出す。
「おお、勇者よ。次、置いていったら、許しません、からね。」
あ、痛い。ちょ、叩かないで、やめて。
「ここまで、めっちゃ、遠かったん、だからね。」
「え、なんかごめんなさい、いてっ、わざとじゃないんです、事故なんです!」
なんかめっちゃ怒ってる!
「もう、二度と、離れない、ように、設定、します。」
え?何言ってるの?
本が飛んできて勝手に俺の手に収まった。
なんだったんだろう。
「あれ?」
なんか、この本・・・・・。
「嘘でしょ、手から離れないんだけど。」
くっついて離れない。ぶんぶん振り回してもミアに引っ張ってもらっても引っ付いたまま離れない。
どうしよう・・・・。