1章の17
時間は少し戻りアレンが気を失った頃ーーーーーー
「あら、アレンったら気絶しちゃったわ。ほら、起きてアレン。村とこの国ではルールが違うのよ。起きなさい。」
ミアがアレンの頬を叩き覚醒を試みる。
「起きないわね。よっぽどショックだったのかしら。ほら、ぼうっとしてないでみんなも手伝って!」
「あ、ああ。皆の者、アレン殿を起こすのだ!」
皆がアレンの名を呼んだりゆすったりしてみるが反応はない。
「あら~、やっぱり起きないわね。アレンは神様から変に偏った教育を受けているからたまに地雷が存在するのよ。」
ミアが困った者ね、と頬に手を当てる。
「ミア殿、ちょっとよろしいか。」
ホホーが神妙な顔で近づいてくる。
「なにかしら。興味の無い話題だったら踏むわよ。」
「なればまず私を!!」
「少し黙っていなさい、豚。」
「ブヒン!」
イヌーオが足を踏まれ吠えながら体を丸めるとミアがそこに座った。
「で、何の御用?あ、言葉遣いをたしなめるとかやめてよね。私、神にだって敬語でしゃべる気ないから。っていうか将来の夢は神を打倒してアレンと添い遂げることだから。私の邪魔をするものは国王だろうが聖獣だろうが踏みつぶすわよ。」
ホホーの額に汗が流れる。
「いや、私も騎士の端くれ。そなたが本気ならこの場の全員を始末することぐらい簡単なのであろうことぐらいわかる。その美しき容姿に見合わぬ強者の気配、扱うのは無手の武術ですかな?」
ミアが微笑む。しかしその微笑みを見てこの場にいる全員が感じていた。
この人は決して逆らってはいけない女王様であると。
若干一名、序列2位の腹心であるユーリ・マリーアだけは頬を染めていたが、それ以外の男たちは 顔を青くして股間をキュッとしていた。
「いやはや恐ろしい。しかしミア殿ほどの美人に好かれるアレン殿は幸せ者ですな。はっはっは。」
ホホーが話題を変えようと試みる。
「本当ですな。はっはっは」
ブッチが追従する。
ミアは少し気分を良くしたように微笑んだ。
「貴方たちよく分かっているじゃない。こちらに来なさい。踏んであげるわ。」
「「いえ、踏むならイヌーオを。」」
二人がハモった。生贄は一人で十分と考えたらしい。
「それで、なんか聞きたいことでもあるのかしら?」
「うむ、先ほどのアレン殿のことだ。」
「ああ、言いたいことは分かったわ。アレンの雰囲気が急に変わったことよね。」
ミアがいつの間にか入れた紅茶を飲みながら答える。
「そう、それです。あの気配が豹変した瞬間、私はまるで神のごとき存在感を前にただただ平服する事しかできなかった。」
ホホーだけでなく他の者たちも体を震わせている。
「そうね。あなたたちは資格を手にしたようだから教えてあげる。アレンはね・・・・。」
「アレン殿は・・・・・?」
全員が固唾を飲んでいる。
「アレンは・・・・すごく思い込みが激しいのよ。」
「お、思い込みですか?」
ホホーは肩透かしを食らったように困惑する。
「そうよ。アレンは自分がそうと思い込んだ存在になるの。薬師だと思い込めば薬師に。鍛冶師だと思い込めば鍛冶師に。剣士だと思い込めば剣士に。村でたくさんの職人に厳しく育てられたせいかしらね、自分を切り替えるスイッチが頭の中にあるって話よ。」
「それはつまり、なりきっている、というだけの事なのか?いやしかし、それではあれほどの気配を纏えるわけが・・・。」
ホホーが思案しながら疑問を口にする。
「ええ、そうね。ただなりきるだけじゃ子供のごっこ遊びと変わらない。けど、アレンは違う。神からもらった加護が働いているの。」
「神の加護?アレン殿はいったいどんな加護を貰っているのだ?」
「それだけじゃなんてことない加護よ。器を作るだけの加護。材料を元にお皿とかコップとかを作るの。木で作ったら木のお皿。ガラスで作ったならガラスのお皿、みたいにね。」
ミアの説明にホホー達はますます困惑する。
「器を作る?それがどのように作用するというのだ?まったくわからぬ。」
「もちろん加護だけじゃ何もできない。アレンが神子であることも重要なの。彼は神のもとで信仰を集める存在なのよ。」
ミアが一拍おいて説明を続ける。
「アレンは自分を信仰を集める器として加護を発動しているの。恐らく無意識に。だから彼を『信じた』とき信仰が彼に集まる。彼を一流の剣士として信じる人が近くに居れば居るだけ力は増しその技は冴えわたる。」
ホホー達は信じられないものを見るようにアレンを見ている。
「今回はアレンが『神の代行者』になりきり『そういう雰囲気』を一瞬で作り出した。貴方たちはそれを信じてしまった事でアレンは力を得たの。本物の『神の代行者たる力』を。まぁこの人数だからそれほど強くもなく長続きもしなかったけどね。」
「あ、あれで強くはなかったと?」
ホホーの頬を汗が流れる。
「当然よ。人が居れば居るだけって言ったでしょ。ここに居るのはアレンを除いてたったの7人しかいないじゃない。条件さえそろえば神とだって戦えるわよ。多分。」
「そんな、まさか。ありえるのか?この世を創りし者と、そんな。」
「まぁ、そんなことはしないでしょうけどね。アレンは神と戦う理由もなければそんな存在になりきる状況も想像できないし。」
全員が無言になる。それを見たミアが軽い感じで話を続ける。
「まぁ、弱点もあるんだけどね。」
「弱点?」
「そうよ。さっきも言ったでしょ。アレンは思い込みが激しい。何かに『なりきる』為にはしょうがないのかもしれない。けどそれは諸刃の剣なの。マイナスイメージを刷り込まれてしまったらアレンは弱くなる。神様に『不倫をしたら大変なことになる』って刷り込まれたからアレンは今気絶してる ようにね。」
「なるほど。こいつには勝てない、と思わせれば勝てる。騎士の戦いも似たような心理戦がありますからな。」
イヌーオがミアの下で椅子になりながら納得していた。
「まぁ、どちらにせよアレンの敵に回るなら私と神を敵に回すことになるんだからおススメしないわね。」
全員が青い顔をしながら同じことを考えていた。
「「こいつらだけは敵に回したら駄目だ。」」
しかし、結果的に彼らはアレンを起こすために色々やらかしてしまうのであった。
何て言うか・・・・その・・困ったことに・・・フフ・・パソコンがクラッシュ・・・しちゃいましてね。・・・書き直し。・・・ハハ・・・逆に燃えてきたぜ。 でも更新は遅くなるかも。