1章の12
えーと俺何してたんだっけ。ああ、そうだ思い出した。
神器のドアノブが光を放ち俺達3人を包み込んだのだ。
そして気が付くとここ、ゼスト王国の王城にある大会議室にいた。
なぜかイヌーオさんは椅子に座っており、俺とミアは従者のように後ろに控えている。
これは強制的に転移させられたと思うべきだな。
俺はここがどこか知らなかったが目の前に『ゼスト王国・王城・大会議室』と書いた半透明のガラ ス窓みたいな板が出てきた。
触れないが確かにそこにある。
恐らくドアノブ型神器の機能だろう。この半透明のガラス窓みたいな板は、そうだな・・・まるで 風を固めたみたいに透明だから、ウィンド。
あ、消えた。スゥ・・・と消えたな。よし、これからはあの板をウィンドゥと名付けよう。
まぁ、そんなことは置いとくとして。
ここがどこかは分かった。でも状況が分からない。
円卓のようなものが置かれていて他の席にも人が座っている。
事情を聴きたいんだが問題がある。
周りの人からの視線がヤバイ。視線の圧力とでもいうのだろうか。
イヌーオさんに全集中されている。
そりゃそうだ。
会議しようとしたら急に可愛いフリフリが付いたドレス姿のおっさんが虚空から現れたのだ。
こっちも訳分かんなくて固まってる。あっちも訳分かんなくて固まってる。どうしよう。
とりあえず悩んでても仕方ない。
ここは俺が代表して隣のやつに声を掛けよう。
隣は・・・女性か。騎士の恰好をしている。
あ、目が合った。ビクッてなってる。それを見た俺もビクッてなってしまった。
気まずい。・・・あ、目を逸らされた。手を合わせ祈るように俯いている。
話しかけるなオーラがものすごい。
駄目だ。別の人にしよう。
その隣は・・・なんか一介の兵士にして門番でもしていそうな人だな。
この人なら・・・駄目だ虚空を見て微動だにしない。完全に気配を消しにかかっている。
うっすら消えかかって見えるほどに気配を消している。
景色に溶け込むかのようにぼんやりして見えてきた。
なにそれ特殊な加護でも持っているのだろうか。それか職業柄の特技かな。
この人も駄目だ。そんなに話しかけられたくないのか。まぁ、俺でも同じ状況なら話しかけて欲し くはないだろうが。
次いこう。
その隣は・・・医者かな?白衣着てるし。
お医者様なら個人の趣向に関係なく相手してくれるかもしれない。
一縷の望みをかけ話しかけてみよう。
俺が口を開きかけたその瞬間。
バンッ!
大会議室の扉が開かれた。
誰だ?ビックリして話しかけるタイミングを失っちゃったじゃん。
他の席の面々が立ち上がって頭を下げている。偉い人なのかな。
俺も周りに倣って頭を下げようとしたが、イヌーオさんは立ち上がりもしない。
小さい声で「父上?」と聞こえてきた。
驚きすぎて固まっているようだ。
それを見てて頭を下げるタイミングを逃した。
そうこうしているうちになんか自己紹介が始まった。
いや、完全にタイミングを逃したね。逃しまくったね。
はーい。自分部外者でーす。って言えない雰囲気じゃん。
でも、どうしようと思ってたらなんと他の人たちも部外者っぽかった。
これ何の会議なんだろう。顔合わせの為に集まったら全員別人でしたって感じか。笑える。
もう後はイヌーオさんに任せようかな。
腐ってもこの国の騎士なんだから説明くらいしてくれるだろう。
後は任せたぜイヌーオさん!