1章の10
気を取り直していこう。
イヌーオさんのことはとりあえず時間に解決してもらうことにしよう。
すぐに解決できる問題でもないし本人にしか解決できない問題でもある。
自分の中の前世の記憶と向き合ってこれからどうするか考えて欲しい。
というかこちらは必要以上に深入りしたくないというのが本音である。
だってめんどくさそうなんだもん。
さて神様に貰った神器はまだまだあるけど一旦休憩しよう。
イヌーオさんというモルモットが壊れてももったいないしね。
それにしても神器の扱いは本当に難しいな。まさかこんなことになるとは思ってもみなかったよ。 ははは。
・・・うん。嘘です。碌なことにならない可能性は若干だけど考慮してた。
でも仕方なかったんだ。神器には使い方次第でものすごく役に立つ物もあるんだよ。
その使い方を考えるのも楽しいし人知を超えた力を目の当たりにするのも楽しい。
それに不思議だけど神器ってなぜかすごく懐かしく感じることがあるんだよな。なぜだろう。
ん~~~、まあいいか。
それより今は二人を落ち着かせないといけない。放っておくと歯止めが利かなくなりそうだしね。
「だから愛を体に取り込むのよ!」
「もっと詳しく教えなさいよ!っていうか脳を解剖させなさいよ!」
「えっ、怖っ!急に怖っ!解剖とか何言ってんの、怖っ!」
研究者魂に火が付いたミアと魔法について説明するイヌーオさん(inきらり)の議論(?)が白熱していた。
二人には悪いけど口を挟ませてもらう。
「はいストッープ。少し落ち着こうか。」
二人が同時にこちらを向く。
「白熱してるところごめんね。ちょっと落ち着こうか。」
「ええ・・・そうね。少し取り乱してしまったみたいね。ごめんなさいアレン。きらりさんも。」
ミアが我に返ってくれた。ほんと昔から興味あることに関しては周りが見えなくなることがあるからね。そこが良いところでもあるんだけれど。
「うむ、私も一度落ち着いて自分自身の現状を見つめる必要がありそうだ。」
お、イヌーオさんの口調に戻ってるね。
「それじゃあ一度解散しましょうか?落ち着いたら夕食後とかにまた来てもらっても構いませんし。こんなことになってしまいましたが他の神器にはまだ興味ありますか?」
俺の本音としてはイヌーオさんにはまだまだ実験体として働いてもらいたい。
今回変なことになってしまったが、自分に降りかからないでよかったとも思っているのだ。
まぁ神器を使ってほんとにヤバイことになったら神様が助けてくれるだろう。
というか、その辺は実は心配していない。神様は俺が本気で困るようなことはしないと思っている。
俺は神様を最終的には信じているのだ。
「おお、それは助かる。正直他の神器には興味がある。だが一度心の整理が必要だとも思っている。不思議と少し時間あればなんとかなるだろうと感じている。帝都への出発は明日の朝にしていただいて、夕食後にもう一度家を訪ねさせてもらっても良いだろうか。」
イヌーオさんはまだ他の神器に興味があるようだ。よかった。モルモットが逃げなくて。
「じゃあミアも一回帰るか?それとも晩御飯食べてく?」
「そうね、ご相伴に与ろうかしら・・・・・・あら、アレン。そのテーブルの上の神器、なんか光ってない?」
テーブルの上には神器がいくつか置きっぱなしになっている。
まだ性能を検証にしていないヤツだ。
ドアノブの形をした神器が弱々しく光を放っている。
恐る恐るだが手に取ってみた。
なんだろう。光が点滅している。
「何かに反応してるのかしら。アレン、なにか感じたりしない?」
「んー。いや、特に異常はないようだ。身体的にも感覚的にも何か変わった感じはしないかな?」
「おお、アレン殿。私にも見せて頂いてもよろしいですかな?」
「え?ええ、どうぞ。なんなら触ってみますか?」
「いいのですか?では遠慮なく。」
イヌーオさんがドアノブをつかんでまじまじと見ている。この人さっきあんな目にあっているのに警戒心ないのかな?
また前世のさらに前世の記憶がよみがえったりしたらどうするのだろう。・・・うん、ちょっと興味あるな。
「イヌーオさん、どうですか?何か体に違和感とかありませんか?前前前世の記憶とかよみがえったりしませんか?」
「むむむ、これは・・・・。」
おお、俺はなんも感じなかったのに、なにか感じ取ったのだろうか。あ、ミアがすごいメモを取ってる。あとで見せてもらおう。
「これは、私の中の愛の魔力に反応しているようですな。」
愛の魔力?異世界の未知のエネルギーに反応してるのか。これは何が起こるか予測できないな。面白い。
「イヌーオさんゆっくりと魔力を込めてもらえますか?」
「わかりました、やってみましょう。むむむむむ・・・・」
段々ドアノブの光が強くなっってきた。
さぁなにが起きるのか。ドキドキわくわくだな。
「むむむむ・・・む?これは、会議室?」
突然イヌーオさんの手の中のドアノブを中心に黒い光が広がった。
その黒い光が俺達3人を飲み込んだ。
反射的に目をつぶってしまい、何が起きたのか見ることはできなかった。
ゆっくり目を開けるとそこは・・・・・・。