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4.行動矛盾

ばーん! と展開させる、といったのに全然展開してません。時間をかけてないぶん、てけとーに見えるかもしれないけど、がんばってます!

2009 10/5 文章の微修正(矛盾点修正)

 俺が義と優に心の中で謝罪してから数時間。日は沈み始め、空がほのかに暗くなり始めた。

 その間はずっと立花は漫画を読み続けていた。俺はといえば、なんだかその空気に耐えられなくなって何度か部屋を出てトイレにしばらく篭る、というよくわからない精神安定方を行っていた。

 「ただいまー」

 トイレでリラックスタイムをとっていると、玄関のほうから声が聞こえた。

 帰ってきたのは母さんだ。

 「ただいま」

 続いて聞こえてきたのは父さんの声。どうやら二人とも帰ってきたらしい。

 俺は何もしていないのに、一応水だけは流してトイレを出る。

 「おかえり」

 俺がそういうと、母さんと父さんはもう一度、ただいま、といってリビングのほうへ向かってゆく。

 …さて、覚悟を決めなきゃな。

 一旦部屋へ戻って立花に知らせておこうと自室へ戻る。

 ドアを開ければ未だに漫画を読み続けている立花がベッドの上に座っている。

 「おい、親が帰ってきたからお前も一緒に下りて来い」

 「ちょっと待って」

 「何を?」

 「今いいところだから」

 「は?」

 間抜けな声を出して立花の読んでいる漫画を覗いてみると、それは少年向け漫画のヴァルスというアクション漫画だった。

 ちょうど主人公が敵と戦っているところのようだ。

 なんだか少年漫画に夢中になっている立花の姿がシュールだった。

 「わかった。先に降りてるから、後でリビングに来てくれ」

 「………………」

 どうやらかなり夢中になっているようで、食い入るように見ている。確かにあの漫画は面白いが、そこまでの魅力はあっただろうか?

 最後に一応「よろしくな」と念を押して、俺は一階に降りてリビングへと向かう。

 「恭史、玄関に見慣れない靴があったけど、誰か友達がきてるの?」

 扉を開けてリビングに入ると、それに気づいた母さんが冷蔵庫の中を探りながら聞いてくる。

 「ああ、それについて話があるんだけど」

 「お兄ちゃんが彼女連れてきたよ」

 …瞬間、母さんが冷蔵庫から取り出した卵を落とし、父さんがネクタイを緩める手を止めた。

 「って、違う! 彼女じゃないっていっただろ!?」

 俺はあわてて否定するが、以前父さんと母さんは止まったままだ。まるで時が止まってしまったかのように。

 もしかして立花が綻びの再構築とやらを使ってまた一時的に時間ととめたんじゃないかと思うぐらいに。

 妹はといえば、してやったり、と何か口元をゆがめている。

 「ち、違う! まずそれについて話があるんだよ! それを聞け!!」

 母さんと父さんに言うと、母さんと父さんは金縛りが解けたように動き出した。

 「話ってなに…? 恭史」

 「いつの間に彼女なんて作ったんだ? もしかして結婚の話とかじゃないだろうな!?」

 「勝手に話を大きくしてんじゃねーーー!!」

 

 …


 なんとかんとか父さんと母さんを落ち着かせた頃に立花が降りてきた。

 それを見て親はまた固まり、立花が一つ礼をするとぎこちなく礼を返していた。

 そして、今俺の前にはものすごく心配そうな顔をした母さんと、少し戸惑いを隠せていない父さんが。

 妹はといえば、立花に魅入っているのかずっと立花を見ている。

 さて、どう切り出すか。それを今まで考えていた。トイレにいる間のリラックスタイムだってそれに費やしていたんだ。

 だから完璧のはず。そう、完璧のはずなんだ!

 そうやって俺が出した答えは――

 「夏休みの間だけ、この人を泊めてやってください!!」

 ――なんとも情けない土下座をするという答えだった。

 さすがに立花はそれを見て目を点にしている。親と妹ももちろん目を点にしている。

 「この人実はホームレスなんだ! だからそれを見捨てられなくて」

 「違うわよ!」

 思いっきり後頭部から頭を叩かれる。

 ちなみに、ホームレスがどうとらこうたらっていうのは今さっき作った。もちろん思考がおかしくなったゆえだ。

 「えっと、この度はうちの両親が海外に出勤することになりまして」

 俺の意味のわからない理由を立花が取り繕おうとするが、親と妹は未だに目を点にしている。

 俺は後頭部をさすりながら立花が何かいっているのを見るが、どうやらその言葉は伝わっていないらしい。というか、いつまで目を点にしてるんだ。

 「……えっと、聞いておくけど彼女とかで、結婚を考えてるなんて話じゃないのよね?」

 母さんがやっと正常に戻り、そんなことを聞いてくる。

 「だから違うっていってるだろ」

 「はぁ…よかったわ。お母さんは本当に二人が結婚をしようだなんていう話を持ち込んできたのかと思って」

 どれだけ早とちりなんだよ。

 「…はっ! えっと、結婚の話じゃなくて泊まりの話か?」

 今まで魂が抜けていたのか、父さんも正常に戻って本題について聞いてくる。

 「えっと、つまりはそういうこと。夏休みの間だけ泊めてやれないかな? できるなら事情は聞いてほしくないんだけど」

 それを聞いて父さんは安堵の息を吐くと、俺の目を見て、そして少し考える。

 「……まあ、父さんはいいぞ。事情は聞かずにおいてやろう」

 「マジか!?」

 「ただし! 一つ屋根の下に異性が住むことになるんだ。それが家族ならまだしも、他所の人なんだ。つまりは……わかってるな?」

 俺は首を縦に振る。

 つまりは責任をもてるかどうか、ということだろう。

 「なら父さんは構わない。母さんと魅奈-ミナ-は?」

 母さんは続いて、お父さんがいいならいい、という。

 ちなみに、魅奈というのは妹の名前だ。

 「あたしもお父さんがいいっていうんなら……」

 少し気が乗らないような感じにいう魅奈を見て父さんは、よし! といって手を差し出してくる。

 「それじゃ意見も一致したことだし。これから夏休みの間だけどよろしく! えっと……名前は?」

 「立花竜仔です」

 「竜仔さんね。それじゃこれからよろしく!」

 「こちらこそ、ご迷惑をかけるかもしれませんが何卒よろしくお願いします」

 立花は丁寧に挨拶をして、父さんの手を握り返した。

 続いて母さんと、そして魅奈と握手をする。

 「それじゃ、改めて俺からもよろ」

 「貴方はいいわよ。さっきしたじゃない」

 ……なんだか傷ついた。

 「そ、それじゃ…気を取り直して、うちの家族を紹介する。こっちが俺の母さん。名前は三枝瑠璃子-サエグサルリコ-。で、次にこっちが俺の父さんで名前は三枝荊寺-サエグサケイジ-。最後に妹の魅奈だ」

 「よろしくね、竜仔さん。あっ、竜仔さんでいいかしら?」

 「はい、構いません」

 「ほら、魅奈もちゃんと挨拶しなさい」

 「うー……よろしくお願いします」

 「よろしくね、魅奈ちゃん」

 こうやって、なんとかかんとかお泊り交渉は成功に終わった。案外あっさり決まってくれたよかった。悩みに悩んでいた俺がバカみたいだ。

 これから夏休みの間――耐えられるのか? 俺の精神?


 ◇


 よろしくね、竜仔さん――。

 無駄な親近感はいらないと決めたそばから、私はそれを作ってしまった。

 再び三枝恭史の部屋に戻って、戻ったそばからあの男はトイレにいってしまった。いったい何回いくのだろうか?

 私はベッドにまた寝転がって、これからどうしようなんてことを考える。


 思えば、他人の家に泊まる、ということだけで親近感というものができるのに気づかなかった自分は莫迦だ。

 ただ名前を呼ぶよりも、それ以上のものが出来てしまう。確かに保護対象にするために監視しなければいけなかったけど、なんだって私はここに来てしまったのだろう。

 ――「…わかった。それじゃ俺は家に帰る。ついでに夏休みの間だけお前が俺の家に居れるかどうかも頼んでおく。これでどうだ?」

 この時、私は簡単に「ええ、いいわよ」なんて答えてしまった自分に正直驚いていた。

 親しくなれば、それだけ失ったときの悲しさが大きくなる。私はそれを二度と味わいたくなかった。

 だというのに、私は自らその悲しみをまた味わうかもしれないことをしたのだ。

 自分でもわかってたけど、私はあの時笑っていた。

 作った笑顔ではない。自然とこぼれたような笑顔だった。

 矛盾している自分がわからなくなる。いや、矛盾してるからわからなくなるのか。

 「………………」

 クーラーの効いた部屋で天井を見つめ続ける。

 さっき読んでいた漫画でも読もうかと思ったけど、今はそんな気さえ起こらない。

 これから夏休みが終わるまで……。それまでに決着を着ける。いや、着けなければいけない。犠牲者なんて出したくないから。

 「あ、忘れてた」

 さっきまでの思考回路を捨てて思い出す。

 私はズボンのポケットから携帯を取り出して梅規に電話をする。

 「もしもし。すまないけど、私の部屋から大きいバッグ三枝家に持ってきて」

 よろしくね、と一言いって私はポケットにまた携帯を戻す。

 これから約一ヶ月お世話になるんだから、準備はしておかないと。

 「……一ヶ月」

 人と人が親しくなるには充分すぎる期間。恐れる必要なんてない。親しくなることに恐れる必要なんてこれっぽっちもない。

 「私が怖いのはその後なんだけどね」

 自嘲気味に少し笑って、私はベッドから起き上がって立ち上がると部屋を出た。


 ◇


 暗い夜道。とはいっても、道は街の街灯照らし出されている。

 その中を一人の男性が歩いている。その姿は日本人にしては少し派手な衣装。首にはじゃらじゃらとアクセサリーをつけている。

 左耳にピアスをつけ、周りの人は関わらないようにとわずかにその男性を避けて歩いていた。

 男性はそれに気づいていたが、それを気にすることも無く道を歩く。

 「おい、兄ちゃん」

 背後から声が聞こえ、男性の腕をつかむ。

 後ろを振り向くと、柄の悪そうな男が三人いた。

 「あんたさ、そんな格好で街中歩いてるって調子乗ってんじゃねえの? ちょっと来いよ?」

 男性は抵抗することもせずに男たちに路地裏へと連れ込まれる。

 路地裏はさっきまで歩いていた道とは違って街の光が入らず真っ暗だ。

 「とりあえずさ、取り締まるからそのアクセサリー。全部俺たちによこせ」

 そういって男が首のアクセサリーに手をかける。

 「触るな、クズ」

 アクセサリーを取ろうとしていた男の腕を男性がはらう。

 それが癪だったのか、男は殴りかかろうとしてくるが――拳が中途半端な位置で止まったまま、男は動かなくなってしまった。

 ほかの二人がよくわからず、止まってしまった男に声をかけるが、男は答えることも動くこともない。

 「お前、何したんだよ!?」

 「調子のってんじゃねえ!!」

 二人が同時に殴りかかろうとして――それもまた止まってしまう。まさにそれは時が止まったかのように動いていない。

 「お前らが調子に乗ってんじゃねえよ、群れる事でしか行動できない猿が」

 冷たく言い放って、男性は男たちの向きをトライアングルになるようにしてその場から立ち去る。

 「猿は猿同士、仲良くな」

 ぱちん、と指を鳴らすと止まっていた男たちは動き出す。そして止まっていた拳が止まることなく、それぞれに顔面に食い込むようにしてストレートにあたり、男たちは倒れた。

 男性の姿はもう路地裏にはなかった。


謎の男登場。といったところです。

正体を明かすのはいつになるかな・・・・?

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