0話 始まり
「なぁミール.......こいつを倒したら、俺はミールと一緒にいられなくなってしまうかもしれない。元の世界に帰らないといけないかもしれない。それでも一緒に戦ってくれるか?」
俺は少し先にいる敵を見ながら、覚悟を決めて相棒に質問してみた。
ちなみに、この世界に残れる可能性もゼロではないが”9.9割”いられないだろう。
こんな質問は流石にすぐ答えれる内容じゃないよな。
「......一緒にいられなくなるのは嫌。だけど、違う世界に行くだけで、死ぬ訳じゃないのよね?なら、私は戦うわ。ただ、1つだけお願いがあるの。」
彼女は悲しそうな顔を浮かべながら、ゆっくりと俺の方を向いた。
「この戦いでは死なないで。別の世界に行っても生きているなら、私達はきっと会えるから。」
涙目で悲しそうな顔は、無理に作った笑顔に変わった。
その顔を見た俺は、彼女を抱きしめて「分かった。」と小声で約束をし、倒すべき敵の元へ2人で向かっていった.......
♢
「どうしても異世界に転生したい...よし、このサイトを使うか(半信半疑)」
そう言いながら、とあるwedサイトを開こうとしている。
俺はこの世界に飽きてしまった......というか、存在したくないと言うのが正しいのかもしれない。
企業で失敗し、今はゲームと漫画に没頭している人生。
毎日こんなことをしているせいか全然生きてる気はしないし、お金も底をつきそうだった。
そんな俺が今思っていることは、”楽しい人生を送りたい”。
あの日から成功したことがないからこそ、思うことだと思う。
その願いを叶えるために最近、異世界に行けると噂のトリップサイトを試すところだ。
もちろん、全てを捨てる覚悟はあったから試そうとしている。
まぁ、捨てるものは何もないけども。
「書くことが多いな......早く行けるなら行きたいのに。」
色々と書かないといけない。
名前や性別、行きたい世界とかね。
めんどいからササッと書いていたら、異世界転生で俺が一番大切だと思う"追加能力"の欄が遂にきた。
これがなかったら、もう自殺していたかもしれない。
あったものの、俺が思っていたのとは少し違った。
「え?追加能力は1つまで?それなら無双できないじゃんか。俺の欲しい能力は、数えられないほどあるのにな......。」
俺の想像と違ったせいで、ハァ......っと深くため息をついてしまった。
欲しい能力は”全魔法属性”や”鑑定”、”賢者”など欲しい能力は色々あるのにな。
やっぱり、現実は俺を敵だと思っているようだ。
そんなことより問題は、無双するための追加能力1つを何にするかだ。
そんな能力はなんだ?
脳みそを台風のように回転させて考えた。
大賢者?それとも勇者?
そんなよく異世界漫画である能力はいらない。
じっくりと考えた時にふと、無双出来そうないい能力を思いついた。
「魔力無限はどうだろうか?」
考えた中で1番最高の能力だろ......って楽しみすぎて小さくガッツポーズしたのは秘密な。
もしも、俺が魔法が使えなかったらその能力は絶対無駄になるだろう。
それでも、魔力は魔法以外にも使い道はあると思い、俺は追加能力の欄に{魔力無限}と書き、最後に全て見直しをした。
書き忘れも無いし、誤字脱字もなく後は下の確定ボタンを押すだけだった。
これを押したら異世界へ転生することが出来る。
そう考えていたため、心臓が高速で”ドクドク”としているのをよく感じた。
そして、確定を押す前に最後に一言。
「じゃあな、俺にとってはクソつまらない世界。新しい世界で楽しい人生を送るぜ。」
イケボ風にいい、ドヤ顔で確定を押した。
最後ぐらい痛い事をしてもいいだろう。
誰も見てないし。
「おぉ?これは成功か?」
俺は黄色と白色の暖かい光に包まれた。
よくある異世界漫画あるあるだな。
これが起きたなら9.9割成功だろう。
逆に行けなかったらなぜ光が出たか怖いし、このワクワクした気持ちをどうしてくれるのかを聞きたい。
そんなことを考えていると俺はバタッと倒れてしまった。
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