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死神使いは陰に生きたい  作者: 黒宗 勇
1/1

プロローグ

初投稿となりますのでどうか色々ご指摘いただければと思います。

 男は全力で走っていた。深夜なこともあり、町の明かりは既に落とされ、空に浮かぶ月の光だけが道を照らしている。人々は寝静まっており、男の足音と荒い息遣いがやけに大きく聞こえる。


 こんな夜中に全力疾走せざるを得ないのは、男の自宅に現れた襲撃者から逃げるためだ。襲撃にあった場合、交戦せずに隠れ家に向かうよう命令されているので、近くにいくつかあるうちの1つを目指していた。


(くそっ!)


 恐怖と混乱で叫びそうになるのを堪えながら15分ほど走って、隠れ家としている小屋に辿り着く。急いで中に入り施錠し、息を整えながら窓際へ移動して恐る恐る外の様子を伺う。


「撒いたみたいだが……上になんて報告すりゃいいんだ……」


男はある組織に属しているので、襲撃は十分考えられることだったが、問題は襲撃者の正体だった。


 全身を覆う黒いボロボロのローブからのぞく顔や腕は白骨化し、その手には一振りの大鎌が握られていた。相対しただけで全身が粟立ち、考える間もなく逃げ出したが、あれは間違いなく――


「死神……」





◇    ◇    ◇    ◇    ◇    






 男が隠れ家へ辿り着いたのと同時刻、男の自宅の前に、黒いドレス姿の女性と、黒いハーフコートに身を包む青年が現れる。2人とも男が去った方を向き無言で立っている。やがて、女性が青年の方を向き、よく透き通る声でどこか楽しんでいるように話しかける。


「あのまま殺せたのに、どうして逃がしたの?それに、わざわざ可視化までさせる必要はあったのかしら?」


青年は、彼女と目を合わせようとはせず、静かに答える。


「あいつが下っ端なのは調査でわかっている。死神を間近で直視したんだ、恐怖で今夜中にでも本部に逃げるはずだ」


「とてもいい表情で逃げていったものね。追跡はどの子がやるの?」


「ベイドをつけてある」


「そう」


「……回りくどいか?」


「いいえ、あなたがどんな手段を用いようと私はそれに従うだけだわ」


そう言って微笑む女性は、人形のように整った顔を青年の顔に近づけ、こう囁いた。


「あなた……『死神使いのスゥト』にね」


そう呼ばれた青年――スゥトは、そこで初めて彼女に顔をむけ、ため息をつく。


「はぁ。従うもなにもお前を呼んだ覚えは……」


「ふふっ」


言葉を遮るように女性は軽く笑い、顔を離す。

スゥトは肩を竦め、足早に歩き出す。


「ベイドが隠れ家を突き止めたみたいだ。行くぞ、()()()()


「今夜も月が綺麗ね。素敵な夜になりそうだわ」


「月、か……」


()()()も月がやけに綺麗だったな、とスゥトは、3年前に自分を襲った悲劇を思い出していた。






読んでくださりありがとうございます。次回以降は長めに作る予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして、紗耶香といいます。 作品読ませてもらいました。 設定が練られていそうで、おもしろそうですね。 次回、楽しみにしています。頑張ってください
2021/04/22 21:56 退会済み
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