表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂漠の国の、引きこもり  作者: 猫の人
砂漠の国の、神殺し
622/695

「あんまり“待て”はしないのですよ?」

 全然自分に手を出さない新庄。

 結はその事に不満を持ち、直談判をした。


「『ずっと傍に居てくれ』って言ったのですよ! どう考えてもプロポーズじゃないですかぁ! なんで手を出さないのです!!」


 結にしてみれば、二人はもう結婚したのだ。

 ならば結ばれるのが自然な流れであり、手を出さない新庄が不実という事になる。

 初日は結がいっぱいいっぱいだったので仕方がないにしても、その次の日からは大丈夫だったはずだと主張する。



 しかし、ここで新庄の表情を見た結は、新庄にそういった意図がなかった事に気が付いてしまう。

 結の機嫌が更に悪くなる。


「ここに来た当初、新庄さん(・・・・)アタシ(・・・)に手を出さなかったのは、分かるのですよ。未成年相手の、略取になるのです」


 日本では、未成年相手に成年が手を出す事を良しとしない。

 ある程度年齢が離れていれば、成人後でも白い目で見られる事も多い。

 新庄が当時の加倉井に手を出さなかったのは、日本人の常識で見れば普通の事だ。ここが異世界だとか、そういった理屈を捏ねなければ正当性が無いのである。



「でも、今の()はもうすぐ30なのですよ。見た目はともかく、中身は大人なのです」


 なお、未成年者が保護されるべきなのは、「正しい判断をするのに足る経験が無い」「経済基盤を持っておらず、相手のいいなりにならざるを得ない状況に陥りやすい」というのが理由だ。

 これに加え児童の場合は、「体がまだ未成熟であるから」と言われる。世の中には年齢が一桁の母親という話もあるが、若年の出産はリスクが高いのは常識であり、そのような例外は考慮すべきではない。


 結の場合は、すべての条件をクリアしているので、それに当てはまらない。

 法的な話をするなら、問題は無いのだ。



 ここまで、新庄は無言。

 自分の中の感情を上手く言語化できないからだ。

 昔であれば理性、理屈を全面に出して説得できたが、今の結にそれはできないため、拒む言葉が出てこない。


「……少しだけ、心の整理をする時間をくれないか?」


 じっと睨む結に根負けした新庄は、ようやくそれだけ、絞り出すように言った。


「ここ二十年はそういう事をしてこなかったから、その、うん」


 とても情けない話ではあったが。


「夜の誘い方を忘れてると言うか、だな。

 どう切り出せばいいか……」


 せめて結を理由に拒む事は言わず、ほんのちょっと、猶予を下さいと頭を下げた。



 これには結も言葉を失くし、苦笑いするしかなかった。


 まだ心まで若返った結なら、思うままに勢いで動けたのだろうが、新庄は人生の守りに入った壮年である。

 無理を言えない部分は、確かにあった。



「あんまり“待て”はしないのですよ?」


 こうして新庄と結の関係は、はっきり決まったのである。


 要所は新庄が押さえるのだろうが、普段は結が決めていく。

 どこにでもある、普通の夫婦関係に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] よかった、続いてた。 たのしみにしています。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ