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砂漠の国の、引きこもり  作者: 猫の人
砂漠の国の、神殺し
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「いきなり砂漠の国に挑んでも勝てないだろう。よって、それ以外の国をまずは平らげる」

 『吸魔の杭』の時に資金を奪い人を減らしたからか、電車の技術を盗もうとする人間らは、稚拙な手段を選ぶようになっている。

 予算がなく、ベテランも退場したのだから、低予算で新人ばかりの組織がほとんどになり、砂漠の国の防諜組織に敵わなくなっている。


 運が良ければ、天才でも現れれば、勝てるかもしれない。

 しかし、同じレベルの人間が競うなら、人数と装備、そして経験値が差を作る。

 若い力は時々そういった不利を覆すが、そんな奇跡は滅多にあるものではない。番狂わせなど、狙って起こせるものではない。


 そんなものに期待しなければならない他国の状況は、かなり悪かった。





「いつ、砂漠の国が攻めてくるか分からないではないか!」

「しかし! これ以上、軍事に金を注ぎ込めば他に影響が出ます!」

「増税だ! 民衆から搾り取ればいいだけだっ!」

「それでは国が死んでしまいます!!」

「そうしなければ連中に国を飲み込まれるだろうが!!」


 ある国は、砂漠の国を脅威と見なし、軍拡路線に舵を切った。

 国を守るためだと、とにかく軍事に国力を注ぎ込む。


 軍事に金を使うのは、生産的ではない。

 それよりも国を富ませ、国力を高める方が、よほど賢い選択である。


 ただ、残念ながら国の上層部が賢いとは限らず、在りもしない未来に怯える臆病さで、最も愚かな道を選ぶ事もある。

 「戦わない」と言えばいいのに、怖いから、何がなんでも新庄と砂漠の国を消さないといけないという妄執に囚われる。

 新庄という存在が抑止力ではなく、恐怖の象徴となると、生半可な戦力で対抗できると考えられず、求められる軍備はかなりの質と量となった。



 人も資金も湧いて出てくるものではないから、税金として国民から徴収されている。

 軍という金食い虫に取り付かれれば国民は飢えていくばかりで、国が疲弊する。


 なのに軍拡を続けたければ……。


「いきなり砂漠の国に挑んでも勝てないだろう。

 よって、それ以外の国をまずは平らげる」


 全く違う、別の国に攻め込むしかなくなる。

 戦争のために軍拡をして、軍拡のために戦争をするのだ。

 それが大きな矛盾と気が付かないまま、馬鹿な国が暴発する。

 国民の意思など省みない愚王が、臆病風に吹かれて自滅の道を歩む。



 なんでこんなに簡単に戦争を起こせるのか?

 それが分かれば誰も苦労はしない。


 本当に戦う必要はあったのか?

 戦う必要など、最初からどこにもない。


 正しい道があろうと、正しいだけで道を選べない人間もいるのだ。

 戦争は起こる。

 些細な理由で、下らない理由で。


 現代日本の知識チートでも、遠い国の戦争を防ぐ知識など存在しないのだ。

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