「間者になっていい奴は、敵地で捕まる覚悟のある奴だけだ、ってか」
新庄が提案した罠は、面白いほど他国の間者を引っ掛ける。
同時に、かなりの数の貴族が処刑されている。
国王のロンが技術漏洩は大罪だから、発覚すれば処刑すると宣言したにもかかわらず、馬鹿な事をする貴族が後を絶たない。
一族郎党根切にされた貴族家もあったが、それでも「自分は大丈夫」と根拠の無い自信で、馬鹿は金欲しさに情報を売るのだ。
頭のいい貴族や要領の良い者たちは、情報を売るなどといった、無駄にハイリスクな儲け話には乗らない。
もっと効率が良くて、国に貢献できる稼ぎ方をするのだ。
要領のいい人間である荻たちは上手く立ち回っていて、一部の信頼できる貴族に話を通して間者の情報を貰い、そのアジトを探し出しては襲撃して敵を殲滅するとともに活動資金を奪っていた。
「間者に人権は無い!」
「いや、この世界じゃ、まだ人権も何もないだろ」
「所詮この世は弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬだけなんだよぉ!
ってノリは、あんま好きじゃねーんだけどなー。
でも、間者をほったらかしにするわけにもいかねーし。潰さにゃあかん。ここは日本みたいなスパイ天国じゃねーんだからな。アチラさんも覚悟完了してるだろうよ」
「間者になっていい奴は、敵地で捕まる覚悟のある奴だけだ、ってか」
荻たちにしてみれば間者は期間限定のボーナスキャラで、襲って財産を奪っても問題の無い相手である。
敵の活動資金や人材は無限にないので、いずれ尽きる。
急いで刈り取らないと他の誰かに持っていかれるので、荻たちはしばらく王都で暗躍して、精力的に動き回った。
索敵のギフト能力を駆使すれば、追跡などはお手の物。
アジトを探し出したあとの襲撃だって、戦闘能力の高さも折り紙付きなので危な気ない。戦闘が専門ではない間者など、今もモンスターを狩ってはギフト能力を維持している荻たちの敵ではない。
結果、誰よりも間者を潰した荻たちは、冒険者時代よりも遥かに多くの資金を得たのだった。
「やっぱ、国がバックにいる連中って金持ってるわ。また金が貯まったら来て欲しいよなー」
「買収用の資金なんだろうけど、金って有る所には有るんだよな」
「なぁ、こんだけ儲かったんだし、ちょっとぐらい遊ぼうぜ」
「賛成! ちょっとぐらいは息抜きしないとなー」
「いいな。たまにはみんなでパーッと騒ぐか」
なお、稼いだ金の1割ぐらいは荻チーム10人の遊行費に割り当てられたようだ。
稼いだ分を全て領地に投資する方が後々を考えると効率が良いのだろうが、そこまでガチガチに自制して生きていくと、心の方に大きなストレスをかけ続ける事になる。
いつもではダメだが、何か祝い事と称して騒ぐのは人として正しいのだ。
領主としては全額投資に回すのが正しいかもしれないが、正しさの奴隷になって何が幸せなんだという話である。
ひたすら頑張るのではなくメリハリと緩急のある人生を送った方が、よほど幸せに生きられる。
大いに笑い、飲んで食う。
冒険者から領主貴族になって変わった部分もあるが、荻たちの本質はどこまでいっても荻たちのままであった。




