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砂漠の国の、引きこもり  作者: 猫の人
男と少女の2人ぼっち生活
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「新庄さんなんかキライです」

 新庄が町から早々に帰ったのは、シドニーに準備時間を与えるのが一つ。そして自身も仕込み、準備をする時間がほしかったからだ。


 新庄にはゴーレムというすぐに動かせる戦力があり、戦うだけならすぐにできるのだが、戦うだけでは意味が無いと考え、それ以外のために手をかける気でいた。


 やるなら一回で確実に敵を仕留めようと考えていて、逃げる間を与える気は無いのである。

 下手に逃がして再起され、また何かされるのが最悪なので、そうならないように思考を巡らせていた。



 その他の理由としては、加倉井が心配だったからだ。

 襲撃者の件は早めに手を打たないといけないので加倉井をオアシスに置いて町に出たが、ああいった状態の加倉井(こども)を放置するのは、育児経験者(ちちおや)としては、無い。そばにいて、寄り添うのが新庄のやるべき事だった。


 だから、命に関わる大事な仕事が終われば、急いで家に帰るのだ。

 慌ててやらなくてもいい、緊急性の低い仕事であれば後回しにできるが、そうでないなら先に済ませる。

 優先順位の付け方を間違えてはいけない。

 大事な仕事を放置することは、結局、家族を守れなくなるのだから。



 そして残念ながら、そんな父親の事情が娘に分かるはずもなく。自分()より仕事が大事だと誤解されるまでが父娘の定番である。





「新庄さんなんかキライです」


 可能な限り急いでいた新庄は、体力を振り絞ってオアシスに戻ってきた。

 序盤はただの砂漠を、中盤からは砂漠より快適な地下通路を通ったとはいえ、普通なら二日はかかる道を一日で走り抜けた。アラフォーで体力の衰えを実感している新庄には、かなりの無茶だ。


 しかしそこまでやっても、一度置き去りにした結果として、新庄は加倉井から非難の視線を向けられる。

 子供なので、加倉井はまだ感情で物事を判断するのだ。懐いていたこともあり、このタイミングで置いていかれたのは腹に据えかねたらしい。


 一応、まだ呼び方が「新庄さん」なので、言葉通り嫌いになったわけではなく、拗ねているだけであったが。

 本当に嫌いであれば、当初のように「おっさん」呼びをしただろう。



 日本であれば、父親は娘にケーキの一つでも買って機嫌を取っただろうが、ここにそんなものは無い。

 残念ながら上手く近寄ることができないので、頭を撫でて機嫌を取るような事もできない。

 八方塞がりである。



 ここで敵が襲ってくる話をすれば、加倉井が更に拗ねることは目に見えている。

 今は、自分が置いていかれる原因になった事など聞きたくないだろうからだ。誤魔化しと取られるかもしれない。


 普通なら優先してしなくてはいけないことではあるが、聞く耳を持たない相手に話をするのも無駄である。

 新庄は空気を読み、その話題を避ける。



 それでも敵は待ってくれないのだが。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば、町から10キロ離れた場所にある出口になんて戻れない……と主人公が言っていた気がするんですが、 いつの間にかその問題が克服されている?
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