「最初に端金を渡しただけで、しかもここを流刑地扱いしといて主人ヅラした屑ども! ぶっ殺す!!」
船団がやって来た。
それを眺める者たちの間で言葉が交わされている。
「使者は送ってこないか」
「そんなもんだろ。ここは逃げ場の無い袋小路。非道を他に知られる事も無いだろうからな」
町を攻めに来たのは、大砲付きの大型の船が三隻と大砲無しの中型の船が十五隻。兵士の数に換算すると推定二千から三千はいる。
これは町の人口約千人よりも、敵兵の方が圧倒的に多い事を意味する。
かなりの戦力を投入しているのが分かる。
「被害を最小限に抑えるのを優先したんだろうね。大戦力で一気に町を制圧した方が、最終的なコストが安くつくと考えられるからな。
そのまま町を支配するにも戦力は必要だから、ここでケチらず戦力を投入する方がよほど利口だと、相手も分かっているんだろう」
「まー、戦力の逐次投入は愚策ってのは、歴史が証明しているか」
「そもそも、敵を俺らだけに限定してないんだろ。モンスターに襲われる事もあるから、それを警戒しているのかも」
「ああ、確かに」
なんでここまでの戦力を用意したのか?
大砲まであるのを考えると過剰な戦力に見えたが、落ち着いて考えれば、いくつか理由が考えられる。
戦力差で町を圧倒して心を折る。
戦力差で被害を抑える。
ここに来るまでと、帰りの航海で、モンスターに備える。
そのどれもが合理的な理由であり、説得力があった。
しかし合理的であるというだけで戦力は用意できない。
そもそも、それだけの戦力を持っていなければ、兵士や船を出せないのは当たり前。
食料に水、武具に薬。そういった準備が必要で、本国の守りを残しつつも、船団を送り出す。
かなりの兵士を抱えていないと出来ない芸当だ。
「これ、かなりの大国が相手とか? ヤバイ?」
「いや、一つの国って事も限らないだろ。複数の国が手を組んだとか」
「いやいや。戦乱の中で同盟とか、無理じゃね? 連合を……」
「「それだ!!」」
何れの船も国旗を掲げていない。
やろうとしている事が外道の所業なので、それが理由と考えていたのだが。
「大砲作り出したの、連合だろ!」
「ここまでの航路だってそうよ! 彼奴らなら知っていても不思議じゃないわ!」
「最初に端金を渡しただけで、しかもここを流刑地扱いしといて主人ヅラした屑ども! ぶっ殺す!!」
思わぬ所で、敵の本国が予測された。
実際、攻めて来たのは元連合の国々だ。
ここに町があるのを知っていたので、これまでに出した金の分だけ色々と持っていくのは当然の権利だと思い、ここまで来たのだ。
彼らは町が発展しているのは自分達のお陰だろうと、利益還元のために略奪する権利を持っているとすら考えている。
町の運営が軌道に乗っている一番の理由は新庄が手を貸したからだが、そんな事情は知らないし、知っていても無視する。
都合のいい部分しか見ない者など、その程度だ。
略奪を正当化できればそれでいいのである。
「連中が連合の船かどうかは関係ない! 俺たちから奪おうとする賊どもなど、誰だろうと迎え撃つまでだ!!
仕掛けが発動するのを待ち、ロケットで皆殺しにしてやれ!!」
町の兵士と住人の戦意は高く、殺意に満ち溢れていた。




