「これなら一緒に行く事もできるのですよね?」
オズワルドの情報網は、普通に船を使うだけでなく、伝書鳩を使ったものまである。
海の向こうの情報をいち早く知るためなので、かなりの予算がかけられていた。
伝書鳩による連絡は途中で鳩が鷹に襲われて食い殺されたり、他の誰かに手紙を奪われたり、雨などで移動中に手紙が駄目になったりと不確実な部分があるが、それでも人を使うよりもよほど早い。
その為、現地の調査員が情報を掴んでから5日ほどで、新庄の所まで連絡が届いた。
軍の移動は遅く、辺境の町までは距離があるので、動き出してすぐに辺境の町が襲われるという事は無い。
それでも、情報を掴んだタイミング次第では、既に襲われている最中かもしれない。
それに、今回伝書鳩を送った国ではなく、それ以外の国が町を襲いに動いているかもしれない。
可能性を考えるとリスクは山積みで、猶予がどれだけあるか分からないのだ。
それに新庄が動いて現地入りするまでの移動時間、迎撃準備を整える準備期間を考えると、時間はいくらあっても足りない。
オズワルドが慌てたのも、仕方の無い事である。
九重たちを助けに行くのは、新庄と加倉井の共通した見解である。
「じゃあ、助けに行ってくるよ。真姫奈は留守番を頼む」
「嫌です」
「いや、これは意地悪を言っているとか、そういう話じゃなくてだな」
「嫌なのです」
「真姫奈……」
「付いて行きます」
しかし加倉井と違い、新庄は一緒に行くという考えを持たなかった。
新庄は時間が無いという事で、飛空艇による移動を考えている。
そうなると、加倉井はどうしても留守番になるというのが新庄の判断だ。
なにしろ、飛空艇は一人乗りなのだ。加倉井が乗るスペースは無い。
加倉井に隠しておきたいという訳ではなく、重量的な問題も何とかなるかもしれないが、物理的に二人で乗るのが難しいのだ。
新庄は飛空艇の事を説明して、加倉井に諦めて欲しいと説得をする。
「つまり、スペースの問題なのですか?」
「そうなんだよ。俺が乗る分には、荷物は魔導書の中に収納しておけばいいだろう? だから荷物を載せるスペースすら無くて、真姫奈を連れていけないんだ」
加倉井は、新庄の説得に納得はしたものの、だったら話は早いと、別の解決策を提案した。
「じゃあ、私が小さくなったら問題ないのですね?」
「どれぐらい?」
「これぐらいですね。≪リトル・リトル≫」
加倉井は、小人化の魔法で自分の体と身に付けているものを小さくした。
すると加倉井は約30㎝まで縮み、新庄の膝よりも背が低くなった。
加倉井はその状態で何か言っているが、新庄まで声が届いていないと分ると、両手を上げて持ち上げて欲しいと要求する。
「驚いたな。こんな魔法もあるんだね」
「小さな穴を潜るのに使う魔法なのですよ。物理的に凄く弱くなるので、使う機会は今まで無かったのです」
新庄の肩に座った加倉井は、新庄の耳を掴んで落ちないようにバランスを取る。
耳を掴まれた新庄だが、小さな加倉井の力で掴まれても痛いとは思わず、くすぐったいだけであった。
それよりも普通に喋ると加倉井の鼓膜が破れかねないので、出来るだけ小声で喋る方が面倒だった。
「これなら一緒に行く事もできるのですよね?」
「まぁ、これなら大丈夫か」
加倉井を戦場に連れて行きたくない新庄であるが、何が何でも置いていきたかったわけではない。
新庄はすでに経験済みだけど、戦争で人殺しをするのはトラウマ物の経験になるだろう。乱戦になれば戦闘中に殺されてしまうかもしれない。
そういったリスクがあるから、置いて行けるものなら置いて行きたかっただけなのだ。
こういった気遣いは、すでに大人の加倉井に対してあまり良くないという自覚が新庄にはある。
だからその願いが叶わないとなれば、現状を受け入れるだけだ。
加倉井の魔法を見た新庄は置いて行く事を諦め、二人で救援に向かうのだった。




