「構いませんよ。これも罰なのでしょう」
半死半生、瀕死の田中を死なない程度に回復させた貴生川は、自身の治療の腕前に満足した。
回復魔法は何種類もあり、貴生川が今回使ったのは、「回復力を高める」回復魔法だった。
この魔法は体内から作用して内臓などの回復もできる魔法なのだが、骨折の回復には向いておらず、先に折れた骨の位置を直さないといけない。
貴生川はもちろんそのような事をせずに回復させたので、折れた骨は曲がったままの形でくっついてしまった。
こうなるとまともに立つ事もできず、手を使うのも難しい。内臓に刺さった骨も刺さったままなので、体を捻るだけでそこから激痛が走るだろう。
四肢を切り落とすのとほぼ同じダメージを与えた訳であり、二度と普通の生活を送れない体にされた田中。
その姿で生きる事が罰なのだと思い、いつか許してやったら、親切で殺してやると楽しそうに笑った。
「貴生川さん……。
殺さなかったんですね」
「お前はそれを望まんだろうからな。感謝せよ」
ボロボロの田中は新庄に引き渡された。
見るも無惨な田中に、痛ましいという顔をする新庄。
貴生川は愉悦を覚えるが、下手な追撃はせずに言葉少なく話を切り上げる。そうする事で新庄に貸し付けるためだ。
ここで馬鹿な物言いをすると、それで相殺されて貸しにならなくなる。
貴生川は、田中を置いてすぐに帰っていった。
田中の体の確認をした新庄は、骨のくっつき方に悲しそうな顔をする。
まっすぐくっつかなかった骨は、もう一度折ってもう一度治すしかない。
しかし、それには相応の医療技術が求められ、新庄にはその技術がない。
特に内臓に刺さった骨は扱いが難しく、治すに治せないのだ。
「構いませんよ。これも罰なのでしょう」
「せめて、これでも飲んでください」
新庄手持ちのポーションでも、こういった骨は治せない。
それでも、少しでも痛みが和らげばいいと、回復ポーションを飲ませる。もちろんそれで田中の状態が良くなる事は無かった。ただの気休めである。
「私の回復魔法も、こうなっては、どうしようもないの」
加倉井も回復魔法を使えるけれど、やはり田中は治せない。
回復魔法の専門家を探す必要があった。




