「私が言っていい事でないのは重々承知の上でお願いします! どうか、関係改善に向け、ご助力をお願いします!!」
新庄と田中。
二人は、塩湖近くに作られた、元ドラゴン大使が住んでいた部屋で顔を合わせていた。
「新庄さん。来ていただき、ありがとうございます。
本当に、ありがとう……」
田中は新庄の顔を見ると、涙を流して頭を下げた。
田中は新庄が不在で三日待たされたのだが、その間に良くない想像をしてしまい、心が疲れきっていたのだ。
もし何日待っても来てくれなければ。討伐のための兵士を揃えてからここに来たのであれば。
田中は、自分で命を絶っていたかもしれない。
それぐらい、生きる事に希望が持てなかった。
「事情は手紙で拝見しましたよ。大変だったようですね。
私は田中さんの味方です。それだけは信じて下さい。どれだけ力になれるか分かりませんが、手を取り合ってこの状況を乗りきりましょう」
俯く田中に、新庄はできるだけ優しく、ゆっくりと声をかける。
本人にその意思が無くとも、知らぬ間に悪行を重ねた魔王になっていたのだから、田中の心労は計り知れない。
労るつもりで、心からの言葉を伝えた。
新庄が本心から助けてくれるのだと知り、田中はその場に崩れ落ち、人目を憚らず大声で泣いた。
「お恥ずかしいところを見せました」
「いえいえ。ここまで一人だったんです。その苦労を思えば、仕方ない事でしょう」
新庄は椅子とテーブルを用意して、冷たい飲み物を出した。
疲れたときには温かい飲み物でもいいが、砂漠の環境なので気分をスッキリとさせるキンキンに冷えたものの方が、体に染み渡る。
氷の浮かんだお茶を飲みながら、二人は今後の相談を行う。
「生きているドラゴンたちは、解放します。まずはそれで人に被害が出ないようにします。これは元の森に連れ帰って、そこで解放すればいいでしょう。
こちらが落としてしまった国も、しばらくは新しい領地の整理で戦争の余裕がありません。私が居なくなれば苦労するとは思いますが、それでもこれ以上の手出しはしない。そのつもりで覚悟を決めました」
田中は、自分である程度の方針を決めていた。
新庄と相談したい事は、その先の話である。
「問題は、私のせいでドラゴンの王、貴生川さんという元転移者だったのですがね。彼との関係の再構築です」
田中は、新庄が貴生川と話し合いをした事を知らなかった。
だから知り得る限りの情報を新庄に渡した上で、冷静な判断を求める。
「私の命で良ければ、どうぞ、使ってください。無益な殺し合いなど、私は望んでいません。
操られたとしても、私は責任を取らないといけないんです」
田中の懸念している事は、人とドラゴンの関係についてだ。
自分のせいで関係が御破算にならないよう、新庄に強く求める。
「私が言っていい事でないのは重々承知の上でお願いします!
どうか、関係改善に向け、ご助力をお願いします!!」
田中は頭をテーブルに打ち付けるように下げた。
新庄はそれを見て、なんとも言えない気持ちにさせられるのだった。




