「ギフト能力があるからって、何でも力押しなんてスマートじゃない」
神罰の条件が機械的なものだとすると、神の脅威はずいぶんどころか、かなり下がる。
言ってしまえば自分から近付かなければ危険性の低い、崖などのような“環境”だ。
知らずにやらかしてしまうならともかく、条件さえ判明すればあとは自己責任だ。
「こっちの神様なら、上手く付き合えるんだけどな」
「だからと言って、神罰で発電するのはやめた方がいいと思うぞ? 罰当たりだけに、知られていない神罰が下るかもしれないんだからな」
「そもそも、その『避雷針』が安定供給されないと、出来ないと思いますよ。
あと、高度2000mの建築物が簡単に作れるものでもないのです。地球にもそんな建物はありませんし、地震が来たら一発じゃないですか」
「いやいや、山の上なら普通に作れるじゃないか」
「ああ、それは確かに。でも、わざわざそんな事をしなくても、普通に発電すればいいのですよ。リスクの方が大きすぎるのです」
「まー、そうなんだけどね」
情報共有と意見交換が終わったあとは、次に確かめる神罰を選んだりした。あとは神罰の利用なども提案されたが、実用性が無いと却下される。
これについては、リスクに見合うメリットが出来てから考えればいいと、後回しだ。
そして新庄は、ドラゴンの森に何かあるのではないかと、持論を展開する。
「ドラゴンが何か隠している?」
「こっちに全部の情報をさらけ出す理由が無いから仕方がない面もあるけどね。どうやってかは後で考えるとして。情報を引き出そうと思うわけだ。
先代が転移者、じゃなくてギフト能力者か。それを殺そうとしていた事とか、疑問は尽きないからね」
「だが、一度聞いて知らんと言われた事を蒸し返せば、先方の機嫌を損ねるぞ。隠していた理由も分からん以上、交渉になるのか?
話の通じる相手に、無理を武力で押し通すなんて嫌だぞ。無法で押し切るなら、最初からそうしてくれとしか思わん」
「それはそうなんだけどさ」
「相手が本気で隠そうとしている事を、無理に暴くのは、研究目的で土地の風習を踏みにじる研究者のようじゃないか」
新庄はやるべき事だと思えば暴力的に解決するのを躊躇わない面を持つが、何事もなければ話し合い解決を目指すモラルはあるし、多少の事なら自制して動かない。
不必要な揉め事と思ってしまえば動かないのだ。
「仕方がない、か。
それでも、神罰の情報共有って事で、一度顔を出しに行くよ。信頼関係なんて、顔を合わせないと醸成されないからね」
「そうそう。信頼関係を築いて、それで話してもらえるように努力しよう。ギフト能力があるからって、何でも力押しなんてスマートじゃない」
ドラゴンの隠し事。
それを早く知るべきだと思う新庄であるが、ここで無理をするのは良くないと思い止まる。
ならばそれを話してもらえるように、正攻法でいこうと、ドラゴンの森に向かうことにするのだった。




