「ここ、砂漠の真ん中ですよね? はは、俺、夢でも見てるのかな?」
それは、新庄の作ったゴーレムが寿命でちょうどいなくなったタイミングである。
砂漠の向こうから、商人の放った調査隊がやって来た。そして新庄が作ったオアシス外壁にたどり着いたのである。
「なんだこれは!?」
「壁だ……。こんな場所に、どうやって?」
彼らは一様に、外壁に慄いたが、それでも仕事を投げ出すことはしなかった。
「ご主人様が、井戸を一晩で作るような男の身辺調査と言っていただろうが。
井戸だけでなく、壁も作れる。それだけにすぎない。
行くぞ」
調査隊の隊長だけは冷静に、自ら前に出つつ、部下へと指示を出す。
部下たちも落ち着いた様子の隊長の背を見て冷静さを取り戻し、指示に従う。
高い壁を越えるために足場を作り、外壁の上へと登る。
「中は……オアシスだ!」
「すげえ、小さな森まである……」
「ここ、砂漠の真ん中ですよね? はは、俺、夢でも見てるのかな?」
壁の上は、横幅が広く作られている。
調査隊はその安定した足場から、壁の中を見渡すが、そこで再び驚愕することになる。
新庄らが神から与えられたオアシス。そして拡張されつつある緑地。彼らのいる方からラクダの姿は見えなかったが、鳥が羽を休めているのは分かった。
ここまで砂漠を歩いてきた彼らの目に、それはまるで楽園のような光景として映った。
「上手くやれば、あれを俺たちが手にいれることになるんだな。
いっそ、ご主人様を裏切ってでも……」
砂漠において、あまりにも尊い光景。
それを見た調査隊隊長の目に、欲望の色が宿る。
あの場所が欲しいと、自分だけのものにしたいと、そう考えてしまったのだ。
「いや、まずは敵戦力の把握からだ。馬鹿なことをして返り討ちに遭うわけにはいかん」
彼らは無防備な壁の上からオアシスの調査を行う。
壁から降りれば再び登るのに多大な労力が必要になるので、より確実に生き延び情報を持ち帰るため、安全策をとった。
「壁の中を見ても、家らしきものは数軒しかありません。うち2軒は人が住んでいるように見えますが、他は空き家のようです。
そして住人ですが、外に出るのは2人しかいませんね。それ以外は断言できませんが、多く見積もっても10人もいないはずです」
とったのだが、1日かけて行った調査により、直ぐに強行策へと切り替わる。
たった10人。それぐらいなら、なんとでもなると思ってしまったのだ。
「お前たち、どうせここまで来たんだ。あのオアシスでゆっくり鋭気を養っていきたいと思わないか?」
彼らの目的は調査であって、新庄やオアシスの確保ではない。
だが、それでも欲に駆られた隊長の提案に異を唱える者はいなかった。




