「加倉井、おかえり」
「加倉井、おかえり」
「ただいま、新庄さん」
加倉井がオアシスに帰ってくる。
その話を手紙で伝えられた新庄は浮かれていた。
加倉井を想って送り出しはしたが、娘のような加倉井がいた方が、やはり嬉しかったからだ。
最後に会ったのは新庄がリスポーンした直後であったが、そこから数ヶ月は過ぎている。四十の新庄はあまり変化がないが、若い加倉井は以前よりも頼もしい雰囲気を身に付けていた。
新庄は目を細め、そんな加倉井を優しい顔で見ている。
「加倉井の家はそのままだからな。すぐにでも使えるように掃除しておいたから。まずは荷物を置いてきなさい」
「はーい」
二人の関係は、仲のいい親子のようであり、それと違うようにも見えた。
恋人のような甘酸っぱい関係には見えないが、気安く、言葉にしなくても分かりあう信頼関係が見えて、二人が親しい間柄だと分かる。
なのに血の繋がりといったものを不思議と感じさせない、違う人間だと思ってしまう。
端から見ても、よく分からない二人であった。
「あの二人、恋人でもなんでもないんですよねぇ。あのラブラブな空気で?」
「親子みたいなものと新庄さんは言ってたけどな。どう見てもそうは見えん」
なお、感じ方は人によって違う。
一部の人間は二人が恋人か夫婦のように見えていて、砂糖を吐きそうな顔をしている。
特に加倉井の部下たちは、加倉井を喪女、行き遅れと思っていたが、だから恋人がいないんだと、納得していた。
彼女たちの目には、自分の両親よりも仲睦まじい新庄と加倉井が、夫婦でないと言われても信じられないのである。
これで恋人がいたら浮気か何かで、男尊女卑の考えがある砂漠の娘たちは、ようやく加倉井を認めようという空気になっていた。
彼女らの勘違いを訂正する者は、どこにもいなかった。




