「人型だけでなく、動物型もいいと思うのですよ。犬型とか、作りませんか?」
新庄はゴーレムを作成することができる。
ゴーレムは鉄の体をベースに、『ゴーレムコア』という魔石でクラフトできるアイテムを組み込む事で起動する。
ゴーレムコアを取り付ける前のベースは魔導書に仕舞えるが、ゴーレムにしてしまうと格納できなくなるので、基本はベースをストックして置く形になる。
一度ゴーレムを作ってしまうと、数日間はそのままになる。
そして魔力切れになるか破壊されると、ゴーレムは粉々になってしまう。
こうなると素材を再回収しても大きく目減りして、使われた鉄は元の半分未満になるし、コアの部分は消滅してしまう。
ゲームでは壊されるまでずっと動くのだが、現実では時間制限付き。ゴーレムは高価な使い捨てのユニットなのだ。
それと、ゴーレムは単純労働にすら使えない、戦闘ユニットである。
ロボットで言うマニピュレーター、手の部分が存在しない。なので、武器や道具を持たせる事はできないし、下手に鎧などを付ければ動きを阻害して弱体化してしまう。
ただ、腕を振り回すだけでかなりの攻撃力を誇り、その単体戦闘能力は魔法無しの加倉井に匹敵する。
戦闘以外での使い道は、ソリを引く事ぐらいか。ラノベで言う、ゴーレム馬車の使い方である。
ただ、負荷をかける事で消費が増すのか、ソリを引かせると半日程度で力尽きる。
もっと潤沢に鉄と魔石が手に入るのであればそういった使い方もアリだが、今の新庄には現実的な用途とは思えなかった。
新庄は最初に数体のゴーレムを作り、その仕様を把握した。
他の素材でベースを作れないかと試してみたが、作れても非常に効率が悪い事を確認しただけで終わっている。
鉄や鋼などならいいが、岩や砂岩、レンガなどでは脆くなるだけでなく、動きは遅く力が弱いだけでなくすぐに力尽きると、まるで良い所が無い。
鋼は若干の性能向上が見られるが、消費がやや重くなる。ガラスの場合は、力が非常に弱くなる半面、素早く長時間の活動が可能であった。
金属素材が最も相性が良く、土や砂に近しい素材は相性が悪い。例外はガラスぐらい。
これが現在、ゴーレムについて分かっている事である。
新庄は100体以上のゴーレムを直ぐに作れるようにしている。
これは過剰戦力でもなんでもなく、彼にしてみれば最低限の備えだ。
まともに戦う事が苦手な分、そうやって備えるのが常識だと思っている。
そして、コアの改良ができないか、現在は研究中だ。
ゲームであれば仕様通りのものしか作れないが、ここは現実なので、改良や改善ができるかもしれない。
改良や改善でなくとも、適性違いの物を作れるかもしれない。
用途によっての使い分けが可能なほどバリエーションがあったら、もう少し生活が豊かになるかもしれない。
「かもしれない」ばかりであるが、この手の研究は時間がかかるので、時間を見付けて気長に進めていくのが正解だ。
ゴーレムコアは魔石とガラスで作るのだが、そこに色々と添加物を足して、性能向上を目指している。
「人型だけでなく、動物型もいいと思うのですよ。犬型とか、作りませんか?」
「残念だけど、それだとまともに動かないんだよね。ゴーレムは人型。そういう仕様みたいなんだ」
なお、形を変えるのは、今のところ成功していない。
手の先端を大きくして鈍器に変えるだけでも動きが悪くなるのだ。
こちらの研究は、当分の間、成果が出ない様子であった。




