「物に感情が染み付くとか、付喪神みたいなアイテムなんだな、きっと」
魔力は物に固定化できる。
さすがに永続性のあるものは無理なのだが、何年か維持するのならなんとかなるのがこの世界の魔法だ。
金の台座は強力な魔力を付与され、宝石でその魔力をちょっとずつ使って装着者を守るように出来ている。
ペンダントであるのは頭に近い装飾品だからで、王冠やティアラなどでもいいのだろうが、コピー品だから身分的な理由でペンダントになったのだろう。
同じ様な物を作るのであれば、強い魔力の受け皿になる素材が良いが、金に拘らなくてもいい。
その為に、強い想いの込められた素材を探していたのだが。
「御手洗の鱗が第一候補だけど、俺たち向けではないよな」
最初に思い付いた、ドラゴンの王、御手洗の素材は選択肢から外す。
御手洗の素材では、自分達が呪われそうだからだ。問答無用で殺しに来た御手洗の素材なので、防御用アイテムに使いたいと思えなかった。
できれば自分に害意を向けていない物と考えていると、このコピー品の製法を、ふと思い付く。
「要は犬神か、これは」
強い想念と言うと、死の間際が最初に思い浮かぶ。
死にたくない、殺そうとする誰かが憎い。そういった感情を長期間持つように追い込んだ誰かを殺し、その血を金に練り込む。
直感ではあったが、新庄はそれが正解なのだろうと確信した。
防御用のマジックアイテム、その器を作るためではあるが、新庄としては取りたくない手段である。
感情の質だけ見ると、防御用ではなく呪いのアイテムを作るのに向いていそうだった。
ちなみに、砂漠の国では乙女の髪を使い、似た様な事をしている。
身寄りの無い幼い娘を神殿で引き取り、そこで成人するまで護国を神に祈らせ、成人するタイミングで髪を回収する。
その髪が使えるかどうかは上が判断するとして、正しく護国の祈りを捧げた乙女の髪は、国王の護りに使われる。
この時代では国と国王は同じなのだ。
しばらく考え込んだ新庄は、無難なところでゴーレムのコアを代用品にしてみるが、2日と持たずに魔力が拡散した。
「物に感情が染み付くとか、付喪神みたいなアイテムなんだな、きっと」
そう考えた新庄は、何年も過ごした我が家を見て、これが使えないかと考え付いた。




