「色々と情報があったので、一度、情報を整理したいと思います」
穏健派ドラゴンの話を龍人から聞いた新庄は、どうするべきかを考える。
穏健派と言いつつも、主流派であるドラゴンの王を暴力でどうにかしてほしいと考えるあたり、穏健派も相当血の気が多い。
言葉に騙されそうになるが、穏健なのは転移者への対応であり、穏やかな気質を持っているわけではなさそうだからだ。
そして相手は初対面の新庄に過度な期待を寄せているようであり、これもかなり面白くない。
利害はある程度一致しているものの、完全に同じというわけではない。
むしろ矢面に立たされる新庄は、いわゆる「勝利に必要な犠牲」として使い潰されそうな雰囲気すらある。
新庄はそこで、今の自分が召喚勇者のような扱いだと気が付くが、それはなんの慰めにもならなかった。
予測される彼らの言い分や報酬は、共通の敵を倒すのだから協力関係で、報酬のやり取りをするような話ではないといったところか。情報提供という協力をしたのだし、あとはそちらが頑張る番だとか。
利害関係を考えれば、むしろ新庄よりも穏健派ドラゴンが頑張るべきだろうが、そんな空気ではない。
話をしているのは龍人で、ドラゴンの奉仕種族である事も関係しているだろう。
彼らの頭は、ドラゴンのために頑張るのが当たり前で、そこに疑問が無いのだと新庄は考えた。
新庄の目的は、ドラゴンとの対話だ。
きっと人間よりも正しい神の知識を持っているだろうから、それを知りたくて来ただけだ。ドラゴンの勢力争いに巻き込まれる事ではない。
で、目の前の龍人としっかり仲良くなっても、新庄の目的は果たせないだろう。
そしてこちらが神の知識を求めていると知られたときに、足元を見られかねない。
ついでに身の危険も増してしまいそうな気がした。
彼らがあまり信用できず、神の側に立たれる可能性すらあった。
新庄が神の知識を求める理由を考えれば、転移者を送り込む神に嫌悪感など持っていないだろう穏健派ドラゴンの派閥は潜在的な敵である可能性が高い。
何より、彼らの言い分、話した内容が正しいのかすら判らない。
何も考えずにドラゴンの王と戦う選択肢など、新庄には無かった。
色々と考えた新庄は結論を出す。
この場で彼らと即敵対するような言動は慎むが、味方すると言質も取らせない。
「色々と情報があったので、一度、情報を整理したいと思います」
問題を先送りして、今日はゆっくり休む。
空は見えないが、そろそろ日が沈む時間だろう。
明日以降に疲労を残さないようにしたかった。
龍人の歓待を断って、新庄はさらに地下へと穴を掘り、この日はすぐに寝てしまうのだった。




