「この剣を売りたい。幾らになる?」
新庄は加倉井をオアシスに置いて、町へとやって来た。
町には食料の買い出しではなく、旅の途中で、一時的な補給という説明をしている。
そう説明すると、加倉井の時とは違い兵役は課せられず、お金を払って中に入ることを許された。
何度もやって来る人間ではなく、一時的な来訪者への扱いはそういうことらしい。
旅人などと近隣の住人では、税の扱いが違うようだ。
この辺りの説明は加倉井が兵役をしているときに聞いていた情報である。
新庄は町に入ると、手持ちのお金で買える食料を買い漁る。そしてその食料を魔導書の中に収納する。
種類が多いと大変だが、品数を減らせば魔導書のページ制限には引っ掛からない。買ったものはスタックされ、コンパクトに収納された。
そうして手持ちの金を使いきってから、武器を取り扱っている店に向かった。
「この剣を売りたい。幾らになる?」
「なかなかいい剣だな。これぐらいでどうだ?」
新庄はそうやって手持ちの武器を売り、資金を追加する。
いい鉱床を見つけたので、鉄は潤沢にあった。鉄の武器を売っても痛くない。
ゲームの鉄は一ヶ所に固まっていないが、満遍なくあった。
現実の鉄は、一ヶ所に固まり偏在している。
どちらが楽かは知らないが、とりあえず、今の新庄は鉄を大量に保有しているのだった。
砂漠だと、鉄製品はいい値段で売れる。
鉄を溶かす、鍛えるためには大量に燃料を消費するので、日本と違い質のいい鉄製品は高いのだ。
新庄も苦労したので分かるが、砂漠で燃料の確保は難しく、この町では輸入に頼りがちである。
海に面した海運の町なのでそこまでぼったくられはしないが、鉄関連は鉱石を安く出荷して、鉄製品を高く買うしかない。そういう環境だった。
新庄は気が付かなかったが、この段階で新庄は町の者に目を付けられることになった。
新庄の情報は新しい領主に報告が飛び、髪と瞳、そして肌の色から、加倉井と結び付けられる。
加倉井の件には慎重になっている新領主であったが、話をするだけなら大丈夫、構わないだろうと、新庄に急ぎ使者が送られることになった。




