「あ、そうだ。新庄さん、蝗害の対策って何ができるんです?」
「あ、そうだ。新庄さん、蝗害の対策って何ができるんです?」
移動中、加倉井は自分達が何をしに行くのか、何で連れてこられたのだろうかと気になり、そんな事を訊ねた。
新庄の事だから、何か有効な対策の一つでもあるのだろうと期待しながら、蝗害の恐怖を振り払いたくての行動だ。
しかし、この期待は裏切られる。
「蝗害に有効な対策なんてものは、無いよ」
残念ながら、新庄もまともな答えを持っていなかった。
新庄もどうすればいいか思い付かず、加倉井や荻たちにも意見を求め、少しでも自分と違う視点で解決策を見いだしたかったというのが本音だ。
地球でも早期発見からの早期対応しか出来ない案件だ。
ギフト能力があると言っても、何でもできるわけではない。
新庄がパッと思い付いたのは、バッタがカビに弱いという話なので、カビでも大量発生させてやろうというぐらいだ。
「オアシスの壁って毒を使ってたけど、ああいうのを設置するのは?」
殺虫剤でも大量にあれば良かったが、あれは人間にも悪影響が出る。新庄がモンスターから抽出している毒も同様だ。
毒などは被害範囲が読みきれなくなるので、最後の手段に近い。
だが、砂漠のオアシスを囲う壁には毒が使われており、それをこちらにも設置するなら、可能ではないかと荻は指摘した。
「あー。確かに。あれなら多少は食い止められるかもね」
確かに壁の設置は可能だ。
もっとも、高さが足りないだろうと、新庄は頭の中で荻の意見を否定する。
人間と違って、バッタは飛ぶのだ。
それを防ぐ高い壁を用意しようとすれば、100mでも全く足りない。
あと、横に何十kmと壁を作ることになるので、時間も資材も不足するだろうと予想された。
それでも何もしないよりはマシだろうと、新庄は『毒の壁』を試す事にする。
守りきることは不可能だが、少しは数を減らせるだろうから。
「数が減れば落ち着くらしいけど、魔法で焼き殺してもらって、どれぐらい効果があるだろうな。
加倉井、広い範囲を焼き尽くすような魔法ってあったか?」
「連発できない魔法なら、あるのですよ。燃やすだけじゃなくて、凍らせる方もいけるのですが、雷系の魔法はアウトです」
「助かる。地道な作業になるけど、確実にお願いする事になる。頼むよ」
明治時代に北海道で起きた蝗害では、大砲を撃ってバッタの誘導をしたという。
加倉井の魔法がどの程度の威力か考えず、新庄は加倉井を最大戦力として計上した。
新庄も爆薬を使った魔法が使えるし、連発もできるが、範囲が狭い。多数を相手にするゲームではなかったので、そういった魔法は持っていないのだ。
魔法関連は、加倉井が主力になるだろう。
そうやって相談する内に、新庄らは王都に着いた。




