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砂漠の国の、引きこもり  作者: 猫の人
男と少女の2人ぼっち生活
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「大丈夫。すぐに加倉井の所に戻ってくるよ」

 新庄はオアシスに引きこもるため、オアシス周辺の土地を緑化している。

 少しでも安定した食料供給の為に農地を作りたいのだ。


 例えばそのために地下では苔を栽培し、土地造りの材料にしている。

 骨粉を使って木を増やし、土が乾かず下草が簡単に枯れない環境を整える。

 鳥がやってくれば糞が肥料になるし、その中にはここには無い植物の種が混じっていて、新たな植物が芽吹く事もある。


 ラクダがやって来たので、オアシス周辺に壁を作る事も忘れない。

 壁があれば、僅かだが周囲とオアシス周りで行われている砂の移動が減るようになる。

 砂が入り込まなければ、緑化した土地が砂漠に飲み込まれる事も無くなる。


 オアシスという資源は有限だが、新庄は自分の知識とギフトをフルに活用して将来(・・)に向けた土台を作っていった。



 だが、それで新庄らの生活がすぐに安定するかと言えば、そうでもない。

 農地ができても、育てる作物の種が無い。

 また、骨粉による加速は、その材料となる骨の少なさからどうしても緑化に回す必要があり、日々の食料を賄えるほどでもない。


 残念ながら、新庄の頑張りは年単位とは言わないが月単位、数ヶ月後にしか結果を出せない。

 それが今の新庄の精一杯だ。





「残りの食料があと僅かになった」


 加倉井が復帰し、数日が経った。

 そこで新庄は、加倉井に対し苦しい食料事情を説明することにした。


「もともと1ヶ月分しかなかったのを、ここまで持たせられたのは良くやったと見ていいだろう。

 だけど、それでも限界だ。これ以上、オアシス周辺だけで生きてはいけない。また、町に行く必要がある」


 新庄が言わなくても、加倉井だって食料が厳しい事は知っている。

 加倉井は結局、町で何も買えなかったのだ。

 自動で食料が補給されない以上、自分たちでどうにかするしかないのに、大して何もできていないのが加倉井の現状である。


 新庄は魚を見付け、砂漠を緑化して動物を呼び込むなどしているのに……。

 食料が無いのは、町に行って何もできなかった自分のせいだと、加倉井は落ち込む。



「今度は俺一人で行くよ。加倉井は、あの町には行き難いんだろう?」

「そんなことないです!」


 そこで、加倉井は新庄に戦力外だと告げられ、ショックを受ける。

 役に立たなければ捨てられるかもしれないと、焦りが生まれた。

 新庄に付いて行きたい、一人になりたくない、捨てないで欲しいという思いから、反射的に否定の言葉が出てきた。



 そんな加倉井の頭を撫で、新庄は微笑む。


「向こうで誰かに怪我を負わせたか、死なせたかしたんだろう?

 その事でキツい思いをしたはずだ。また向こうに行けば、また嫌な思いをすることになるだろう。そこまで頑張らなくてもいいんだよ。

 加倉井はまだ子供なんだ。ここは、大人に任せておきなさい。甘えていいんだよ」

「でも……」

「大丈夫。すぐに加倉井の所に戻ってくるよ」


 町で何も買わずに戻ってきた。服は無事で、怪我もしていない。

 そしてオアシスに戻ってきた加倉井は寝込んだ。起きてからも戦闘訓練をロクにしていない。


 そこから新庄は、おおよその事情を察していた。

 向こうで戦い、何かあったと思い至るのは簡単な事だった。

 むしろ、分からない方がどうにかしている。分からない人がいるとすれば、それは相手に対し全く関心が無い者ぐらいであろう。



 加倉井は悩んだ。

 悩んで、悩んで、どうしようもないと分かっても、どうにかなってほしくて、現実が認められなかった。


 新庄に一緒に居て欲しい。一人は嫌だ。

 ご飯が食べられないのは嫌だ。

 町には行きたくない。でも、新庄とは一緒に居たい。

 知られたくなかった事に気が付かれていた。嫌われたかもしれない。嫌われたくない。


 考えが上手くまとまらず、全部自分の望むままであってほしいのに、それが叶わない事だけははっきりと分かっていて。


「う、うぅぅ~~!」


 声を押し殺すように、泣き出した。


 子供だから。

 まだ、出来る事なんて何も無いから。


 ギフトがあっても、何の意味もない。

 我が儘を言って嫌われたくなくて、どうにもならない現実に、加倉井は泣き続けている。



 新庄は、そんな加倉井の隣にずっといた。

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