「では、私を殺そうとした事で罰を受けるとして、どの程度が妥当だと思う?」
年配の騎士によって、若い騎士の暴走は取り押さえられた。
失点は無かった事にならないが、これ以上の無礼はされない。
そして直接の上司が頭を下げたことで、最低限の筋は通された。
ただ、ここから先は難しい話となる。
直接の上司は頭を下げたが、この場にはさらにその上、国王がいる。
これが国内の問題であれば大事にはならないのだが、やらかした事が新庄への、国の外の人間への暴発だ。
最終的な責任は、国王に回っていくし、下げたくもない頭を下げねばならない。
それが責任者の役割だ。
若い王も、それが分かって渋面を作る。
王という立場と若さから来るプライドで、人前で頭を下げなければならない羞恥と怒りを顔に出してしまう。
それを見た新庄は、被害者として別の落とし所を提案する事にした。
「ならばその男の首を、ここで切り落としてしまおうか」
「それは……どうか、どうか、御慈悲を!!」
年配の騎士は、一瞬何を言われたのか分からないという顔で頭を上げた。
そして言葉の意味が理解できると、再び頭を下げ、先程までよりも必死になって嘆願する。
「不思議な事を言うね。
それは私を殺そうとした。止められねば、剣を抜き、国王が賓客と招いた者を切り付けようとしたのだよ。
王命に逆らい、国に害を為そうとした反逆者だ。何を庇う?」
新庄は年配の騎士が頭を下げたところで国王に目配せをして、しばらく任せてほしいとお願いをした。
国王は先程までとはうって変わり、面白そうな事になるだろうと、愉快そうな顔をする。そして新庄に頷いて返すと、その場にいる臣下たちに手で何も言うなと命令した。
「この者はまだ若く、分別が付いておらぬのです。これから学べば、それも身に付くでしょう。まだやり直しの機会がある筈。どうか、命ばかりはお助けください!」
「もしも、だが。私が死んだあとにでも、同じことを言うのか? その場合、言う相手はロン殿となるだろうがね」
「……いいえ。その時は、この者だけでなく、私も首を落とすことになります。そして一族郎党が処罰されます。何か言う事は無いでしょう」
新庄は、無慈悲に冷酷に、年配の騎士を言葉で追い詰める。
先程のやり取りに違和感を感じたからだ。
具体的には、この年配の騎士こそが騒動の黒幕と考えていた。
だから、最低でもこの年配の騎士をどうにかする流れを作るつもりで言葉を選んだ。
「では、私を殺そうとした事で罰を受けるとして、どの程度が妥当だと思う?
ロン殿。それと他のみんな。申し訳ないが、助けないでおくれよ。私はこの者が自分で適切だと思う罰を口にして欲しいだけなんだ。
私を殺そうとした。それがどれぐらいの罪なのか、自分でどう思っているのかを彼自身の言葉で教えて欲しいだけなんだ」
その通りに罰を与えるわけではないと、新庄は逃げ道を塞ぎつつ、笑顔で楽しそうに声をかけた。




